‘FIAT ABARTH’



第1回ミニスケWEBコンを成功させ、その後のミニスケ系ネットコンペの流れを作った “インコンプリートモデル” のRIROさんの放つ次なるイベントは・・・なんとイタリアをテーマにした「イタリーコン」。
イタリー産のものなら何でもありという未だかつてない無法コンペ!?
なんでイタリーなのかはご本人に語っていただくとして、知り合いの企画にはなるべく協力したい ので参加させてもらうことにしました。

昔の作品は載せないつもりだったのですが・・・
イタリアもののAFVキットはもってないし、作ってる時間もねえ、ってことでジャンル違いながら晒してしまいます。
“FIAT ABARTH”
「フィアット・アバルト」-車好きなら泣く子も黙るこの名前。
マイナーなミニスケを作ってるくらいで私は小さくてかっこいいものが大好き。
そして自動車の世界で小さくてかっこいいといえばアバルトにトドメをさす、これは常識!
でも「何?ソレ」という方のために簡単にその歴史をば・・

アバルト社略歴

創業者はカルロ・アバルト(オーストリア生まれ 本名カール 1908-1979)
17才でオートバイと自動車のシャーシ設計の見習い工になったカールは2輪のレーシングチャンピオン を夢見て自作のオートバイでレースの世界にデビュー。
20代で5回の欧州チャンピオンに輝くも大きな事故を起こしレーシングライダーの道を断念する。
第2次大戦後エンジニアとしての腕を買われてイタリアの自動車メーカー、チシタリアの技術/レーシング 部門の責任者に就任。
1949年 経営の悪化したチシタリア社の設備をそっくり引き継ぐかたちで自分の会社「ABARTH&C.」を設立。
以後数々のレーシングカーを生み出し、欧州の小排気量クラスでは無敵の名声をほしいままにする。
1971年までに勝利したレースは7000以上。
その車の多くは大メーカー・フィアットのコンポーネントを利用しており、フィアットの車でレースに 勝つ度に報酬を出すという契約をフィアットと取り付けていたので100%ABARTH自製の車でも「FIAT ABARTH」 といったりしていた。(カルロは商売人でもある)
1971年 労働争議の嵐が吹き荒れABARTH&C.もその影響から逃れることはできず、レース活動を断念した カルロは会社をフィアットに売却、自らは顧問の立場に退く。
以後、ABARTHはフィアットのレーシング部門として名を残すことになるが1997年 同じく フィアットに吸収されたアルファロメオのレーシング部門アルファ・コルセとともにフィアット・オート・コルセ と名を変え、その歴史に幕を閉じる。

アバルト社のエンブレムについて

カルロ・アバルトは占星術を信奉しており自分の正座「サソリ」を会社のエンブレムに採用した。
これは排気量が2倍もある相手を刺すという車の性格にもつながり、 アバルトに魅せられた人々は好んで「サソリの毒にやられた」などと表現する。
(カルロが乙女座や天秤座でなくてよかった)
日本ではアバルトの人気が高いのでフィアットはリトモやウーノや新チンクエチェントといった小型車 にサソリのバッジをべたべた付けて「アバルト仕様」として売り出したが、濃ゆいアバルトマニアは これらをアバルトの仲間と認めない。
(最後の純血アバルトは吸収の直前に発表されたアウトビアンキA112・アバルト)

アバルトのデザイン

アバルトは常に活動の中心をレースにおいていましたが、資金調達のために市販車用チューンアップ パーツやそれを組み込んだ完成車を市販しました。
そのデザインはフィアットの小型大衆車(600,500,850等)をそのまま利用したものと (いわゆる「羊の皮を被った狼」というヤツ。これはこれで魅力的で人気がある)レーシングカーに 申し訳程度の保安部品をつけたようなアグレッシブなクーペの2種類に大別できます。
後者の代表はなんといってもカロッツェリア(※)ザガートの手になる小粋でエレガントなアルミ製ボディで ありましょう。
小さくて丸っこいボディは小動物を想わせる可愛らしさがあり、日本の軽自動車と違い細部の仕上げ も飛び切り上質。
シニョール・アバルトは車造りにおいて性能と同様デザインにも全く妥協のなかった人で、 エンジニアを叱咤してこう言っていたという。
「私たちはイタリアにいるのだ。ここはエレガンスとアートの国だよ。皆、美しいものが好きなのだ。」
まさに「宝石のような」という形容が恥ずかしくない車たちなのです。

※-カロッツェリアとは・・・イタリアの伝統的な工房でボディのデザインと製造を専門に請け負う業者。
(カーオーディオのことではありません)
メーカーには大抵なじみのカロッツェリアがあり、フェラーリといえばピニンファリーナ、ランボルギーニ といえばベルトーネが有名。
ザガートは中堅のカロッツェリアで最近の作では(といっても大分前だけど)アルファロメオSZ/RZがある。
「Z」のエンブレムがまたカッコいい。

イタリアの車はなぜカッコいいのか。
ボディはもちろんだけどドアの取ってとかテールランプとかディティールがいちいちカッコいい。
この民族にはデザイナーでなくとも造形に対する鋭い感覚が遺伝子に組み込まれているような気がします。
(あくまで平均値としてだけど)
歴史的にレオナルド・ダビンチやミケランジェロといった偉大な彫刻家・建築家を多く輩出した国であり、 現在でもデザインの中心地。
生まれた時から美しいものに囲まれて、みんな目が肥えている。
フィアット600・500のデザインは設計主任のダンテ・ジアコーザ技師が自ら手がけたそうですが、 現在の目でみても完璧なフォルムを誇っていることでもそれは納得できるでありましょう。
かの国では美しくないものは受け入れられないのです。

何を作ってもついカッコよくなってしまうのは戦車のような殺伐とした兵器においても同様で、 小さな砲塔に不釣合いなほど大きな大砲を載せるのは許せなかったんでしょうねえ。
というのは冗談としても、
最弱とばかにされるイタリア戦車ですが、自動車レースほどには戦争に熱心になれないのがまたイタリア らしくて好きだなあ。
昨今の自動車デザイン界はドイツがリードしている感がありますが、イタリアンデザインの復活を望みたいところ です。

かく言う私めもサソリの毒にやられてしまった人間であります。
いつかはこんな車を所有したいなあと思いつつ、文化遺産みたいなものだから屋根つき車庫がない 人は持っちゃいかんのだろうなぁ。
でせめて模型でもと。
写真はアバルトの車を数多くリリースしているイタリアのBARNINIとフランスのPROVENCE MOULAGEの 1/43キットをストレートに組んだもの。
ストックがまだたっぷりあるんですけどね。
今はミニスケAFV中心にやってるんで大分ご無沙汰なんですが、またぼちぼち作ろうかな。

ここまで読んでアバルトに興味を持ったあなた!
なんと日本にアバルトの世界的コレクションを見れる場所があるのですぞ。
ギャラリーアバルト自動車美術館
博物館でなく美術館というところに館長のこだわりが伺える。
館の建物自体もピニンファリーナが設計しており雰囲気満点。
カプチーノも飲めて、イタリア〜ンな気分を満喫できますぞ。

(2005/10)



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