フジミ KV-II 製作記



サイト開設4年目にして初のフジミ・ワールドアーマー、初のソ連戦車であります。
コラムに書いたようにフジミに対する思い入れは人一倍強いものの大概の製品は昔作った経験があるのと、 田舎育ちゆえ舶来品がもの珍しく、出戻り後はマッチ、エアにうつつをぬかしているため何かきっかけが ないと食指が動かない。

このKV-IIも30年くらい前に作ったことがあるのですが、こんなに組みにくかったっけ?
金型の痛みと設計の拙さに閉口させられました。
ということで普通必要ない基本的な間違いの訂正などを紹介しつつ・・・

まずはシャーシ。
トーションバーサスペンション特有の左右の転輪のずれを再現します。

右側の接地輪のみちょっと後ろにずらす。
ドイツ戦車は大抵上部転輪もいっしょにずれるので前後2箇所をカットすればすむのですが、こいつの場合 上部転輪は左右対称なので側板を4つに分割して組み直しています。
ずらし量は写真を見て適当に決めたので正確ではありませんが、実測で1.8mmほどです。
まあ、自己満足の部類ですが。
印しをつけた四角い凹みは同シリーズのKV-Iの増加装甲を接着するための凹みでKV-IIでは必要ないのでパテで埋めましょう。
転輪外周の穴が凸モールドになっているのでピンバイスで開口。
これだけで往生しました。

上の図はインストからのコピーですが転輪パーツ15の裏表が逆じゃないのかな?
これだと真ん中の隙間が広くなりすぎる。
下の図のようにモールド面を外側にするのが正しい。

左側が今回製作のきっかけになったモノ、今年発売されたトランペッター1/72 JS-3のプラ履帯です。

このトラペのキット、履帯が組み立て式と一体成形のパーツと2種類入っていて、要は1セットまるまる 余るのです。
これが使えないかなと興味のないJS-3を買ってしまいました。
オリジナルのベルト履帯(右側)はさすがの私もちょっと使う気になれませんからねえ・・・

比較するとトラペの方が当然ながら幅が広いのですが、穴列の幅は逆に狭い。


穴に合うように起動輪は接着面を削って幅をつめ、スプロケットも薄く削る。
スプロケットと履帯のピッチは偶然にもピッタリでうれしくなってしまいました。
(オリジ履帯は当時の国産スタンダードでちゃんと嵌まりません・・・)

実車写真を見るとシャーシと履帯はかなりぎりぎり(A部)で、履帯はフェンダーからちょっとはみ出して いる(B部)。
この位置関係を考慮して各パーツのすり合わせを行い、最終的にフェンダーの幅を0.5mmほど削っています。

トラペの履帯は専用設計でもこれほどうまくいくまいというくらいぴったりですね。
(旧日東のキングタイガー、III号用に設計した専用履帯はトホホな出来だし・・)

プラ履帯を組むときの一般的な技を1つ。
つなぎ目のところでカックンと折れ曲がるといかにもなので、位置を少しずらしてつなぎ目の1コマをグイッと曲げてやると自然につながります。

上側も手で曲げ癖をつけてたるみを表現。
プラの硬度を考慮しつつ「割れる寸前」を狙ってください。

長さは2コマカットするとちょうどよくなりました。

フェンダーのステーは分厚くて穴も開いてないので自作しました。

パソコンのお絵かきソフトで外形を描いて必要なだけコピーします。
同じものを量産するのは手作業の最も苦手とするところで精神的にもきついのですが、 パソコンが使えるようになって大分楽になりましたね。

これを0.2mm透明プラ板に両面テープでくっつけてまず穴を切り抜いて成形します。
外形は印しだけつけてまだ切り離しません。

穴を完全に成形してから最後に外形を切り離し。

今回の裏テーマはダメージ表現です。
新品のようなフェンダーじゃ雰囲気でませんもんね。

まずフェンダーを0.3mmくらいの厚さまで削り込む。
そして裏からランナー/との粉/接着剤を混ぜた自作パテをべったりと塗り付けます。
半日ほど放置して柔らかくなったところでラジオペンチでダメージをつけていきました。
激しく曲がっているところは部分的に線香の熱を併用しています。

この方法は以前パテを厚盛りしたらプラがぶよぶよに変形してしまった経験から思いつきました。
熱だけで曲げるとエッジが丸まったりしますので、こちらの方が板金らしい表情がつけられると思います。
パテはもちろん完全硬化する前に削り落とします。

左がKV-II、右がKV-Iの砲塔天面パーツ。
設計者が違う人なのかペリスコープガードの大きさが全然違いますねえ(笑)

このキット、ディテールが全般的にごつく分厚くできているので、ここやクラッペ(部品19)、 牽引フック基部(31他)、排気管(25他)取付けフランジ、砲塔背面ハッチ(53)ヒンジ部、 防盾カバー(47)といった部品を薄く、小さく成形してやるとオモチャっぽさがなくなり見栄えが よくなります。

砲塔側面の図。

防盾とサイドカバーの円弧が全然合わないので同心円になるように防盾を削り込み。(C部)

D部は円弧になってますが、実車写真で確認できなかったのでピン角に成形しました。

雑具箱の取っての工作。

プラ角棒に銅線を巻きつけてカッターの刃をあてがい、ハンマーで軽くたたく。
これはトニーおじさんの本に載ってる方法ですが、ここから私のオリジナル。
切断すると少し広がるので角棒の断面をあらかじめ台形にすればちょうど直角になるはず、と作った 後で気がついた。

ヒンジには糊つきアルミ箔を使用。
いいかげん目がきついです。

拡大画像
くどいので説明は省略しますが例によってこまごまと手を入れております。

拡大画像
履帯のたるみ具合がなぜか左右でずいぶん違ってしまいました。
これかなり微妙なもので1コマ抜くと届かなくなってします。
まあ、ドイツ兵なら気にしそうだけどロシア兵は気にしないに違いない、と決め付けてそのまま(笑)

拡大画像
雑具箱を1つ開いた状態にしたかったので0.5と0.2mmプラ板で自作しました。
あるシーンのビネットを計画しております。

久々に作ったフジミWAシリーズ。
いろんなところに落とし穴があって注意しないと落っこちそうになりますけど、なぜか憎めないフジミ 極初期のキットたち。
ワクワクして作った昔の記憶のせいでしょうか。

シリーズNo.1のキングタイガーもそうですけど、プロポーション的には侮れないものがあるので、 フジミさんには金型の補修と履帯の新規設計を切にお願い致します。


(2006,11)


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