模型かんたん撮影術




型のサイトを見ていて、作例自体はすばらしいのに写真の撮り方でずいぶん 損してるなぁと感じることがよくあります。
考えてみれば模型製作と写真撮影は全く別の技術ですし、HPを作るまでは写真なんて スナップくらいしか撮ったことのない人が大部分でしょうから無理もありません。
そこで今回はデジカメでHP用の写真を撮る、ということに特化した撮影術(というほどのモンでもないけど) を書いてみたいと思います。
といっても私は撮影の専門家ではありませんし、満足な写真はめったに撮れたことがなく、毎回試行錯誤 してる素人なので「お前の写真はどうなんだ」という突っ込みはご勘弁願います。

ずはカメラ選びから。
カメラの形式には大別してコンパクトカメラタイプと一眼レフタイプがあります。
一眼レフはちょっと前までアマチュアの手の届くものではありませんでしたが、最近になって10万円代 まで降りてきて、奮発すれば買えるようになりました。
一眼レフといえば高級カメラの代名詞、コンパクトカメラよりもいい画が撮れるに違いない、今度のボーナス でイッチョウ買うか、と考えてるアナタ、それは間違いです
こと模型を撮ることに限っていえば、コンパクトカメラの方がよいのです。
理由は後述します。

次は画素数の問題。
最近はコンパクトカメラでも4メガ5メガがめずらしくなくなりました。
紙にプリントする場合は画素数が多い方が有利ですが、HP用に限定すればそんな高画素は必要ありません。
モニターの解像度と写真の画素数によって表示される画の大きさが決まってしまいますので、 画素数が多すぎると画が大きすぎて見難くなりますし、当然データも重くなる。
結局は縮小せざるを得ないのです。
トリミングすることを考えても2メガもあれば十分でしょう。
結論として、「型遅れのしょぼいコンパクトカメラで十分」ということになります。

誌に掲載される写真はもちろんちゃんとしたスタジオで完璧にセットされた照明のもとで撮影される わけですが、われわれ素人はそんなことはしてられません。
撮影が面倒になればHPの更新自体が億劫になるし、第一模型製作の時間がとれなくなる。
写真はなるべく簡単に撮りたいものです。
私のお勧めは「薄曇りの日に屋外で撮影する」というもの。
あえて影を強く出したいときは晴天でもかまいませんが模型をきれいに見せたいならば薄曇りがいいでしょう。
それでも影が気になる場合はボール紙にアルミ箔を張ってレフ板を作り、光を当ててやります。

いい写真」というのはどんな写真でしょうか?
技術的には「ピント」と「色味」の2点に集約されるでしょう。
ピントはもちろん、どこかを狙って合わせるのが大前提ですが、例えば戦車を斜め前から撮るときに 砲塔にピントを合わせたとしましょう。
砲身の先端から車体後部までビシっとピントが合っている写真を被写界深度(以下深度)の深い写真、 逆に前後がボケボケの写真を深度の浅い写真といいます。
どちらがいい写真かは表現の問題になりますので、一概にはいえませんが、模型の写真に実物のような 臨場感を持たせたいと思ったとき、大概の人は深度の深い写真を良しとするでしょう。
昔の怪獣映画で自衛隊戦車の登場シーンに臨場感がないのは実に深度の浅さが主な原因なのです。
(この問題に真正面から取り組んだ最初の映画は「2001年宇宙の旅」だと思う)
ではどうやったら深度の深い写真がとれるのか。
写真の深度は下記の3つの要素によって決定されます。

・カメラから被写体までの距離
・レンズの焦点距離
・絞り値

1つずつ解説します。
カメラと被写体の距離が近いほど深度の浅い写真になります。
模型を模型っぽく見せてしまう最大の原因がこれです。
しかしスケールモデルを撮る以上はこれは宿命的なもので、どうにもなりません。
ミニスケは小さいのでこの効果はさらに顕著。
解決するには離れた位置から高画質モードで撮影し、後でトリミングする、という方法が考えられます。
しかしこれはレンズの歪みを利用して巨大感を演出するという効果をスポイルしてしまう (離れれば離れるほど歪みは小さくなる)ので一長一短です。

レンズの焦点距離とは?
平行な光がレンズを通過して一点に収束するときのレンズ中心から焦点までの距離をいい、 大抵はレンズの周辺にf=○○mm(あるいは単に○○mm)という形で表記してあります。
これがf=○○mm〜○○mmというようにある幅をもっているのがズームレンズということになります。
画角(望遠とか広角とか)に関係なく、この焦点距離が短い方(ズームレンズなら広角の方) が深度が深くなるという性質があるのです。
先に述べた一眼レフよりコンパクトカメラが有利だというのはまさにこの点です。
コンパクトカメラは撮像面(CCDなどの受光面)が小さいので比例的に光学系全体が小さく、焦点距離も 短く(だいたい10mm以下)設計されており、一眼レフとコンパクトカメラで同じ場所から同じ画角の写真 を撮ったとしてもコンパクトカメラの方が深度の深い写真になります。(逆にボケ味のきれいなポートレート などは撮れないことになる)

絞りとはレンズと撮像面の間にあって、丸い穴が大きくなったり小さくなったりして光の量を調節する もので、F○○という数値で表され、値が大きいほど穴の直径が小さくなり深度の深い写真になります。 穴を極限まで小さくしたのがピンホールカメラというやつで、レンズもピント調節機構もありません。
絞りを調節するのは作画の基本で、ちょっと高いカメラには「絞り優先」というモードがあって調節 できるようになってます。
ご自分のカメラの取接で確認してみてください。
では調節できないカメラはどうすればいいのか。
被写体の光量を上げて(明るくして)やればいいのです
フルオートカメラではカメラが状況を判断して勝手に絞りをセットします。
被写体が十分に明るければ自動的に小さい絞りがセットされ、深度の深い写真になります。
「屋外で撮影する」理由の一つはこれです。
屋内でいくら照明をあてても屋外の光量にはおよびません。

屋外で撮影する」もう一つの理由は「色の再現」です。
カメラというのは屋外で撮影したとき最も忠実に色を再現するように設計されているのでその条件に 近ずけてやるのがポイントです。
背景もなるべくなら自然の風景が理想的。
しかし模型の背景となるとそうもいきませんよね。
1つの手としては違和感のない外国の風景写真などを背景にすること。

模型を強調するために背景を単色にしたいときはどうするか。
フルオートで撮影すると全てのピクセルを混ぜたときにグレー気味になるようにカメラが自動的に 色味を調整します。
背景が白いと被写体は黒っぽく、背景が黒いと被写体は白っぽく、コントラストも低くなって きれいな写真になりません。
これを防ぐにはなるべくアップで撮って背景の面積を小さくすること、逆に背景が切れるまで引いて周囲にわざと 外の風景を写しこんで後で不用部分をトリミングしてやる、というような方法が考えられます。
要は単色の占める割合が大きくならないように、画面の中にバランスよく色を配してやるのが きれいな写真を撮るコツなのです。

(2004,4)