「007 カジノ・ロワイヤル」

 面白かったんだけど、やっぱ好きなんでどうしても文句も言いたくなっちゃう(笑)

 まず宣伝文句に唄われていた「ジェームス・ボンドが007になる前の物語り…」と言うのには偽りアリですね。
 宣伝を聞くとまだ若い諜報部員になり立ての若者が成長して00ナンバーのエリートになってく物語り……かと思いきや、冒頭から00ナンバーになりました。って言ってるし、そもそもこの新ボンドさん。最初っからチョー強いし若くもない(失礼)
 アクと言い顔つきと言いアクション映画の役者として悪くないんだけど、若き日のジェームス・ボンド、と言うのはどうなのか?

 「ゴールデン・アイ」(もう10年も前なんですね…)以来の登板となるマーティン・キャンベル監督の面目躍如たる畳み掛けるアクションはダイナミックで痛快なんだけど、冒頭からもうすっかり007の完成品を見ているようだった。

 「ゴールデン・アイ」の時も思ったけど、かすかな糸口を命がけで追いかけて行くボンドの活躍はよ〜くセリフを読んでないと分からなくなっちゃいますね。
 この展開なら最後にジェームス・ボンドのテーマを流して「俺の名はボンド…」ってセリフさえ言わせればそれまでの展開は何でも良かったんじゃん? なんて言いたくなっちゃう。

 今回悲劇的な末路を向かえるヒロインとの途中の恋愛の経過が盛り上がっていればラストの印象が大分良くなったんじゃないかと思うんだけど、あの強気でクールに登場したクールなお姉さんがボンドが急襲して来た殺し屋を殺すのを見て急にしおらしくなってシャワー浴びて泣いてるところは「何で? 急にどうしちゃったんだ姉ちゃん?」と思ってしまった。
 またそこに被さるいかにも感傷的な音楽がベタと言うか嫌らしくってダメでしたね。

 最近のシリーズを担当してるデヴィッド・アーノルドさんの音楽がまたオレは嫌ですね。
 本人もインタビューで言ってましたけど、ジョン・バリーの音楽を本人の許可を得て真似してるんだとか……だからなんでしょうけれど、ジョン・バリーモドキの環境音楽みたいな曲調が何とも陳腐に感じられてしまうんですよねぇ。
 まだマービン・ハムリッシュ(古過ぎかな)やエリック・セラの様に過去のシリーズを踏襲しながらもオリジナリティを発揮した音楽が好きですね。オープニングの唄とグラフィックはカッコ良いと思ったけど。

 それと悪役ですが、今回タイトルにもなっているカジノで大勝負をする相手役、片眼に傷があって目の色が左右違い、時おり血の涙を流すと言う……そして悪人から預かった大金を元にテロリストを使って株を操作して金儲けしてると言う……不気味なキャラとか良かったんですけど、金を借りた相手の殺し屋に狙われて「必ず返すから…」と懇願してる姿とか出て来ちゃうと何だか弱弱しくってね〜ちょっと役不足な感じがしてしまった。

 今回の作品は久々の原作アリ(007第一作)物だったんだけど、おそらくこの部分だけが原作を活かした部分であろうカジノでのトランプ勝負シーンと、その他の今風なトンデモアクションなシーンとのギャップが大きくて違和感があった。

 最近の007を観てていつも思うんだけど、やっぱ007って東西冷戦時代の産物であって、ここまで時代がズレて来てしまうともうアチコチがギクシャクして作品としての統一感さえ損なわれてしまってる気がする。
 いっそのこと時代設定を60〜70年代に戻してやったらどうでしょう? なんても思うんだけれど、今回の企画こそそんな作りにして欲しかったですね。

 ともあれやっぱし好きですから〜(笑)新作が出来るとまた観に行っちゃうんだよな〜「ゴジラ」と同じですね、コレは映画ファンの性ですねぇ(苦笑)。



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