「007/ムーンレイカー」
前作「私を愛したスパイ」の大ヒットを受けての大スケール作品。
007シリーズではお約束としてエンドクレジットにいつも次回作の題名が表示されるんだけれど、実は「私を愛したスパイ」のエンドクレジットでは次回作は「ユア・アイズ・オンリー」になっている。
でも前作のヒットと、この年は「スター・ウォーズ」の出現で映画界が空前のSFブームだったこともあってか、急遽宇宙を舞台にした作品に変更になったのかな。
「私を愛したスパイ」と言ういわばシリーズの到達点を踏まえての本作では、悪役がさらにスケールアップしています。
その野望が凄い! ノアの箱舟よろしく新しい世界に必要な人間だけを選んでスペースシャトルに乗せて宇宙に移住させる。
そして地球上の人間だけを全部殺す細菌兵器を宇宙から地球に打ち込んで、自分たち以外の人間を全部殺した後で地球に戻って自分たちだけの新しい世界を作ろうと言うのだ!
多分シリーズ史上一番凄い野望だったのではないかな。そんなこと企んだのは勿論大富豪のオジサンですよ。
そして前作で大人気を博した殺し屋ジョーズが(シリーズ史上唯一!)再登場してトムとジェリーかポパイとブルートかってくらいボンドと楽しい追っ駆けあいを展開します。
特にこの頃はもうお約束になった冒頭のアクションで飛行機からパラシュートを付けずに落っこちるアクションは当時としては凄い驚きでしたねぇ。
音楽は近頃のデヴィッド・アーノルドによる "モドキ" でない本家のジョン・バリーが担当しています。
後半宇宙空間で宇宙服を着た兵隊どうしの乱戦はまるで「サンダーボール作戦」の海底での戦いを宇宙に置き換えた様でした。
しかし実はオレ最初観た時にはコレあんまし好きじゃなかったんですよねぇ。
というのもちょっとコレは前作のヒットに気をよくし過ぎてるのか、随所に観客への媚びみたいなユルイ描写が目立つこともあって。
例えばボンドの乗るゴンドラが水上から地上に上がって来て走るのを見て目をパチクリさせる鳩の顔とか、草原を馬に乗って走るシーンで意味もなく「荒野の七人」のテーマを流してみたりとか、ドアのロックを解くのに暗証番号を押すと「未知との遭遇」のポ・ピ・ペ・パ・ピーが鳴ったり……。
あと最後のジョーズもちょっと調子に乗りすぎかなぁ、悪役が日和るのってそれまでの前振りとか余程の必然性が無いと白けますよねぇ。
あと大写しにされるシチズンのポスターとかあからさまなタイアップもありましたしね。テレビでやる時はいつも切ってますけど。
あと又の活躍を楽しみにしていたロータス・エスプリがちょっとしか出て来なかったのも不満だったかな。
実はこの車続く「ユア・アイズ・オンリー」では爆発しちゃうんですけど。まぁそれは余談でしたね。
そんなで本作以降のムーア007作品は劇場に観に行かなくなってしまったのでした(笑)。