「題名のない子守唄」
久し振りのペルナトーレ&モリコーネのディナーが食べられるとあって、出来るだけ予備知識なしに
楽しもうと思って行って来ました。でもあんまし人気無いんだか、既に新宿は終わっちゃって銀座しかやって
なくて、せっせとシネスイッチまで行って来ましたよ。美味しいモノを食べさせてくれるシェフの料理なら
ツベコベ言わず出て来た物を堪能するに限りますからねぇ〜とワクワクしながら待ってたんだけど、出された
物の蓋を開けてみてちょっとビックリ。かつての様な多分に感傷的な物語に甘味なモリコーネの調べ……と思
っていたら、コレがどーして激烈な人生を
歩む女を主人公にしたハードボイルドな展開! モリコーネ節もニューシネマ〜マレーナを思わせるメロディアス
系でなく、どちらかと言うとアンタッチャブル〜狼の挽歌(古すぎ?)を思わせるトンデモカッコ良い系で、
それに乗せて復讐なのか情熱なのか観客に説明されずズンズン行動して行く主人公の女! 次々と観客に疑問を
投げかけつつ、展開して行く中で徐々に明らかにされて行く後説(先に行動を描写して後から
その訳を説明して行く手法)後説、後説な展開にモリコーネの調べが高揚感を煽る! まるで「バッドエデ
ュケーション」や「女はみんな生きている」みたいな謎解きな展開(影響でも受けたのかな?)ハードな展開
が面白くって途中監督がトルナトーレであることも忘れてしまうくらいだった(笑)
いつものトルナトーレ&モリコーネ節を期待して来た向きにゃ不評を買ってしまうかもしれませんけど。
トルナトーレとしては新境地を開拓したと言うところなのかな。調べてみると今回ペルナトーレと始めて協同
脚本を書いてるマッシモ・デ・リタと言う人はかつて「狼の挽歌」の原案やコルブッチのマカロニ「ガンマン
大連合」とかを書いてる人だそうです。どうりで主人公が若い頃只一人愛した恋人の死体をゴミの山
から掘り出して号泣するシーンは何ともマカロニテイストな残酷描写だなぁと思った(笑)
しかしてトルナトーレとしては新境地に挑戦した謎解きハードボイルドなんですが、後から思うとアレレ……
と思うところや「そりゃ死んでるだろう?」と突っ込みを入れたくなる部分もチラホラ? ありました。主人公
が母性に目覚め、娘を守る為とは言え共感し切れない行動もありましたね。この女優さんクセニア・ラパポルト
と言う人は本作でいろいろ賞も貰っている様ですが、売春婦の若い頃から現在までの年輪を重ねた表情の変化
は見事でした。ん〜でも、どうも冷静で頭が良すぎで、子供育てたことなんか無い筈なのに、既にベテランの
母親の様な振る舞いには違和感は否めなかったですね。とは言え面白くって情に訴えるところもあって、出され
た時にゃ戸惑いましたけど、そのまんまハードボイルドとして楽しみましたよ〜。原題はイタリア語で
よく分かりませんが「名も無い女の何タラ……」みたいな感じなんでしょうか。まぁトルナトーレ作品と言う
売りで宣伝するならこの邦題は如何にもソレっぽい、と言うことなんでしょうねぇ。