「ランボー 最後の戦場」
ヒャッホー! ランボォーー! ズダダダダダダ……やれ〜やっちまええ〜〜〜!!! 拳を上げて叫びたくなった(笑)そんな自分に怖さも感じたり……
いや〜コレは多分に毒がありますね。しかしそれだけに面白かった……。
いつの日か筋肉バカの汚名を着せられたスタローンは 「ロッキーファイナル」 の件もあるので今作もパスかなと思っていたのだけれど、ネットで観た人のレビューを読むに 「脈アリ」 な匂いを感じたので観に行って来ました。
そしたらもーう、金子修介が 「大怪獣総攻撃」 でゴジラをハードに復活させたの思い出しましたね。オープニングで今は亡きあのゴールドスミスのメロディを奏で始めると、もう胸に熱い思いが込み上げて来ます。
しかし62歳のこのランボーよ! さすがに今回は自身が拷問を受けたり絶体絶命な危機に陥ったりはしないけど、この 「待ってましたぁ!」 とばかりにいつも良いタイミングで出て来ては弓をビュンビュン飛ばしたり、ズダダダ……と機関銃で敵どもをなぎ払う様には燃え燃えですよ。
それといつもは単独行動なランボーですが、今回はサブキャラとして出てくる5人の荒くれ傭兵たちが実に魅力的でした。やはり62歳のランボーひとりではキツかったのかな。
でもこの国籍も人種も違う5人は各々個性的で魅力的なキャラなんだけど、それぞれにもっと突っ込んだ人物描写が無かったのはちょっと残念。ランボーとの絡みをもっと描いて欲しかったな。
中には同じ兵士としての友情が生まれそうな人もいたのに、でもアレ以上描いてしまうとランボーの影が薄くなってしまうから、と言うことなのかな。それとやっぱランボーは孤独でないといけないしね。
だ〜けどこの、今回舞台になっているミャンマーと言う国は、こないだ日本のジャーナリストが射殺されて話題にもなりましたけど、実際こんな酷い実情なんですかねぇ、でも現地で実際に苦しんでる人たちがこの映画見たら 「自分たちの苦しんでいる状況をこんな娯楽映画に仕立てて楽しんでいやがって!」 って怒るんじゃないでしょうか。
しかしそれだけにこの情状酌量の余地の微塵もない政府軍たちの悪さにリアリティがあって、プライベートライアンな血みどろ描写も相まって、見せますねぇ。
スタローン的には 「今世界で一番酷い虐殺が行われているところを舞台にして、その実情を世界に知らせたい」 と言う趣旨があったそうだけど、その意味じゃ充分過ぎるくらいに伝わりました。
しかしこの残虐描写はどうだ! 水田の中に地雷を投げ込んで捕虜たちを無理やり走らせたり、女はレイプし放題、子供も平気で撃ち殺す。そりゃR−17指定にもなりますわなぁ。
調べたら今までのランボーシリーズは全てアメリカではR指定だったらしいけど、思うに前3作は別に子供に見せても平気だけど、本作は残虐過ぎますね、オレももし子供がいたら見せたくないかもしれない。
そんな作品なのに観ていると 「こんな奴等皆ぶっ殺してしまえー」 とか熱くなってる自分がいて……ふと考えると心の中にこれ程暴力を欲するストレスが潜んでいたのかと思って怖くなります。
でも語弊を恐れずに言いますけど、映画ってただのマンガでターザンみたく筋肉バカな展開よりも、ある程度こうしたリアリティと言う毒を含んでいなければ、本気で面白がって観ることも出来ないと思います。
ランボー第一作は1982年でしたけど、明らかにチャールズ・ブロンソンやクリント・イーストウッド等が活躍していた60〜70年代のヒーローを踏襲していますね。でもこれだけ血みどろでリアルな描写を見ていると、かつての映画は激しいアクションの中にもどこか牧歌的と言うか、ペキンパーの作品でさえ、そんなに生々しく毒を感じずに見ていられたな……と思うんだけれど、まぁ時代の移り変わりですかね。映像がリアルになり過ぎたと言うか。
やはり 「プライベートライアン」 がひとつの分岐点になっていますね。もうスタローンも62歳やし、いよいよ60〜70年代の雰囲気を残すヒーローはいなくなってしまうのかもしれませんねぇ。
そして、今時たった90分の上映時間! こ〜れも60〜70年代的ですねぇ、凄く短く感じます。出来ればもっと傭兵たちの描写とかランボーとの絡みとかを膨らませて欲しかったなぁと思いましたけど、そこをあえて描かずバッサリ切って、ちょっと喰い足りないくらいのシャープさで仕上げてしまったところがさじ加減なんでしょうか。
それだけ本作のランボーは久々にそのキャラクターに無尽蔵な魅力を発揮していましたけど。こ〜れが喋らないんですよねー。かつてのウォルター・ヒルじゃないですけど、寡黙なヒーロー程魅力が出ると言うさじ加減を計算してのことなんでしょうか、見てると 「あ〜もっとランボーの心情を知りたい、胸の内を聞かせて欲しい」 って思うんですけど、喋らない。そう感じさせることこそが魅力であると言うことをスタローンも良く分かってらっしゃるんでしょうか。
喋るとボロが出るから、とも考えていたのかもしれません(笑) 「ダイハード4」 のブルース・ウィリスみたく 「英雄ってものはなぁ……」 なんて始められた日にゃあぶち壊しですからねぇ。やっぱし真のヒーローには寡黙こそが最大の言葉なのかもしれません。
それだけに時々喋る台詞には、思わず聞き入ってしまいます。予告編にもある 「意味も無く生きるか、目的の為に死ぬか……」 って決め台詞は仲間割れしそうになった傭兵に向けての短歌だったのだけれど、それ程シーンに添っている台詞とは思えなかった。でもそれ程浮いてもいなかったのはその前に 「やはり自分は兵士としてしか生きられない存在なのだ」 と言うボヤキが活きていたからでしょう。それは相手に言いつつも兵士としての在り方を自分に問うたんでしょうね。
現実に起こっている恐ろしい戦場を舞台にして、架空のヒーローがメチャメチャに悪い奴をやっつける! こ〜れこそが娯楽作品なんでしょうねぇ。本当に本当に良くツボを抑えている作りだなぁと思いました。
まぁオレはリアルタイムにシリーズを全部封切り時に映画館で観て来ましたからね、そうした感慨もひとしおですけれど、オレ的にゃ紛れも無く 「ロッキーファイナル」 よりこっちですよこっち。
ラスト戦場から一転した故郷の風景には言い様の無い感慨が沸きます……泣きました(笑)これもただ黙ってひとり歩いてく姿が良いんだよなぁ。