「アバター」

 コレは封切り当時は3D時代の幕開け的な作品として凄い話題になりましたねぇ
 加えてキャメロン12年振りの新作と言うことで期待はしてましたけど、ど〜もお話の内 容が陳腐に過ぎて、幾ら3Dの画像が素晴らしいと聞いても、それだけで2時間40分は持 たないだろうと二の足を踏んでいたのですが、たまにゃ映画館で映画を観たいし、かと言っ て他にコレと言うのもないし……で行って来た訳ですよ。

 幾ら最新技術の3D映像といっても内容が 「ミッション」〜「ダンス・ウィズ・ウルブス」〜「ラ ストサムライ」 〜に続く "ミイラ取りがミイラになって戦う" シリーズのSF版でしょ。
 準備に12年も掛けすぎて話の鮮度が落ちてしまったのと、新しいモノを作ろうと考え過ぎ て結果的に陳腐なモノになってしまった……ってことかなぁと思ってた。
 そりゃインディアンやサムライには滅びの美学や悲壮な感動がありましたけど、今更また 架空の設定を作って少数民族が横暴な力で滅ぼされて行く話なんて見たくありませんやね ぇ……。

 などと四の五の思いつつ客席へ向かうと、入り口で3Dメガネを渡されます。前から見ると 赤いフレームが ”仮面の忍者赤影” みたい。中に電池が仕込んであるらしく結構重い。
 オレ映画観る時は普通に眼鏡を掛けるので、その上に重ねて掛けるにはよっぽど鼻が 高くないとずり落ちてしまいます。
 映画館で立体映画を観るのは遥か昔に "東映まんがまつり" の「人造人間キカイダー」以 来。キカイダーと闘ってる怪人が突然観客に向けて 「ここから先は立体映画だ! 勇気のあ るヤツは立体メガネを掛けてみろ」 と言うので赤と緑のセロファンが張ってある紙で出来た メガネを掛けて見るのだけれど、どこが飛び出してんだかよく分かんなくって、メガネを外す と画像が2重になってぼやけてたのだけ覚えてる。

 あとディズニーランドのキャプテンEO。アレは目の前にマイケル・ジャクソンが浮かんでた りして驚きましたけど。どうもオレは劇映画を楽しむにゃ立体映画なんて返って妨げになる くらいに思ってるので、ピクサーのアニメとかも敬遠してました。昔の 「ジョーズ3D」 とかも 立体であることを不自然に活かした描写がヘンでしたよねぇ。

 そんで 「アバター」 本編が始まったワケですよ。そしたらあーた。ボヨヨンですよ(笑)字幕 の文字が目の前に浮かんでて思わず手で触ってみようとしたり。空中に浮遊してる物が触 れる程そばに来て漂ってたりするのはキャプテンEOみたいですが、他の人のレビューに書 いてあった通り、確かに空間の "奥行き" が深い! 軍のミーティングのシーンで集会室み たいなとこに人がいっぱいいるところで、本当に目の前に人の頭がボコボコと奥の奥まで連 なってるみたいなのが凄い。
 メガネを外してみると昔のキカイダーと同じ、映像の輪郭が全部二重にダブってブレて見え るんですね。

 とにかく一番目立つのは人物。目の前に生身の俳優さんがボコッといるみたいで 「スター ウォーズ」 のR2D2から出て来たレイア姫のホログラムがいっぱい出て来てるみたいな感 じですかね。
 シガニー・ウィーバーとか目の前で本物が演技してるみたいで、撮影現場を見学してるみ たいでした。

 最初は映像が珍しくってメガネを掛けたり外したりして観ているうちに物語は始まって、最 初の設定とかが説明されて行くんだけど、なかなか集中出来ません。
 まぁ大体のとこは知ってるしそんな難しい話じゃないんだけど、内容はやっぱしミイラ取り がミイラになって行く展開が御都合に合わせて進んで行き、ああ〜やっぱし、という感じ。蛍 光植物が光ってるパンドラ星のジャングルはラブホの深海ルームみたいです。

 かつてのサムライやインディアンの代わりに今回人間に迫害を受ける少数民族は、パンド ラという惑星に住むナヴィという身長3メートルの青い色をしたでかいインディアンみたいな の。
 現実の世界では少数民族を迫害して、映画では架空の少数民族を作って娯楽に仕立て てるなんて、人間ってなんて勝手なのだろうと鼻白んで来てしまう。
 ……と観ているうちにふとあることに気が付いた……サムライやインディアンはかつて実 在して、滅ぼされたという歴史は映画といえども変えられないけれど、ここに出て来る青い インディアンたちはフィクションなのだから、そうだよ、もしかしたら……と気付いたら俄然楽 しくなって来た。

 そうですよ、そうなんですよ! 青いインディアンたちは滅びずに人間に勝つのかもしれ ない! 終盤青いインディアンたちの反撃が始まると 「いけいけーやっつけろー!」 と拳を 上げて叫びたくなった(笑)。

 この辺までくるとすっかり3D画像の世界にも普通に馴染んで来ているのだけれど、遥か 彼方までパノラマが広がるシーンは奥行きがあって美しく、翼竜に乗ったナヴィたちが大挙し て飛んで来る光景にゃ涙が出た。
 後半ヘリコプター部隊と翼竜に乗ったナヴィたちとの空中戦はリアルな臨場感があって 魅せましたねぇ。いや〜燃えた(笑)。

 と言う訳で最後はフィクション故の奇跡が起こり、大自然が怒ってオームの大暴走(笑) フィクションにしか出来ないカタルシスをもたらしてくれて、みごとサムライやインディアンた ちの恨みを晴らしてくれました(笑)。
 オレ的にはそれが最大のポイントですね。観る前はあまりにもツマラナそうだと思ってた のに、観終わってみるとと〜っても楽しかった♪ 

 あとよく言われてるナウシカを初めとして宮崎アニメやガンダムからの盗用? の件は他 にも 「地獄の黙示録」 のキルゴア大佐みたくコーヒーカップを片手に式をとる軍人オヤジと か、リストにしたら凄い数になるんじゃないかな。群れをなして飛ぶヘリコプターやギガント みたいな輸送機も宮崎テイストでした。
 中でもオレ的に一番喰い付いたのは原住民たちが輪になって祈ってるところですかね、 巨大な卵が割れてモスラが出てきて人間をやっつけるのかと思った。

 キャメロンらしいなと思ったところはやっぱあの最後の最後までしぶとく頑張るクリント・イ ーストウッドとジャン・クロード・バンダムを足して2で割ったよな軍人オヤジのタフっぷりです かね、あのロボットはガンダムと言うより 「太陽の牙ダグラム」 の方に近かったですけど。 あのマッチョ親父はプレデターと戦っても良い勝負しそうだ。

 しーかしこの3D技術! もし 「パーフェクトストーム」 が3Dだったらオレ絶対泣いてます ね(笑)アレはただでさえ三回くらいマジで「ワァー!」って叫んでましたから。



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