「アバウト・シュミット」

 号泣(笑)  映画ファンはこういう一本を観る為に、数ある駄作品に大金を取られ ても一気に元を取る。それでまた気を取り直して映画を観続けていくのだ。

 感情移入出来ることの快楽! サラリーマンをやったことなんかなくっても、結婚し たことも子供を持ったことももちろん定年したことなんてなくっても、まだ主人公の半 分くらいしか生きていなくても……。
 シュミットと一緒に40年勤めた会社を定年し、妻を亡くして心配な娘の元へ旅に出 る。
 その道中の出来事をシュミットと一緒に体験し、泣いたり笑ったり、そして娘の結婚 相手の家族! たちに迎えられて……キャシー・ベイツ! キャシー・ベイツ! キャ シー・ベイツーッ!
 彼女の場面がもうひと芝居あったなら、ジャック・ニコルソンは喰われていたかもし れませんね(笑)。

 それにしてもあの家族! とくにフィアンセ! ばんざ〜い(謎)
 実に微妙な、確かにシュミットの言う様にバカにも見えるし、それでいて娘が惚れる のも分かるようなエキセントリックさもあってこの絶妙加減っ!
 あの髭! あのヘアースタイル! ブラボー(ってちょっと言い過ぎかな・笑)。
 あの家族の微妙なニュアンスがなかったら、この作品はきっと失敗していたでしょう ね。
 誰しも経験があるであろう、友達の家族に招かれてひとり混じって食事をした時に感 じるあの違和感!

 もう可笑しくって可笑しくって、良く出来た映画って大概そうだと思うけど、オープ ニングから製作者たちの意図が画面からほとばしっていて、観ている方を本当に素直な 気持ちに落ち着かせてくれる。

 あのフィアンセを始めとする家族の描写はきっと苦労したと思うけど、拍手を送りた い。
 もちろんニコルソンも、彼でなかったらオレだってあんな素直な気持ちで観れなかっ たと思う。

「恋愛小説家」と言い、本当に良い仕事を選んでいますよね。それもきっと俳優として 大きな才能のひとつなんだろうなぁ。

 シュミットと同じ気持ちになって、一緒にひとりぼっちの旅をして、そしてラストの 結婚式で……彼の気持ちの選択には心を揺さぶられて、涙と一緒に溜まった垢が流され て行く様で。
 これこそ極上の快楽ですよ、他の媒体では決して得られない教養を貰って、たった2 時間で一回り成長したよなリッチな気分でした。



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