「あん」

 ハンセン病で生涯を隔離されて生きてきた徳江さん。施設で50年間作って来たアンコの味は天下一品。

 ムショ上がりで、借金の為に生涯どら焼き屋をやるしかないクタビレ男の店長さん。

 こ〜の二人が出会って……。

 物語のお膳立てが素晴らしくって、どんどん画面に引き込まれていきますね。

 そ〜れにしても樹木希林さん。全然演技をしている様に見えない!

 永瀬正敏さんも、ちょっと見ない間にオッサンなったなぁ〜と思ったけど、このワケ有り男の佇まいはどうですか! 役作りなんでしょうね。毎度スーパーリアルな存在感で希林さんの存在に応えていました。

 あと出番は少なかったけど、市原悦子さんは勿論、中学生の娘を持つ母親役の水野美紀さんも、女社長の浅田美代子さんもリアルで素晴らしかった。

 女性監督らしい視点というのか、日常の描写がきめ細やかで情感がありました。

 徳江さんは自分の生き様を通して、惰性だけで生きて来た店長さんや観客にも勇気を与えた。

「人は何かになる為に生れてきたのではなく、この世界を見たり聴いたりする為に生まれてきたのよ」という言葉には言い知れぬ救いがありました。


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