「あのひとだけには」

SPIRALMOON the 10th session(2005年4月1日下北沢「劇」小劇場)

舞台は死んだ霊魂たちが「最後にひとりだけ会いたい人に会わせて貰う」と言う場所。かと言って誰でも 会わせて貰える訳ではなく、そこには厳選な審査があって、それに合格した霊魂しか会うことは許されない。また 例え許されたとしても、会えるのは現世に生きている人の夢の中での3分間だけ。そしてそんな霊たちの世話をするのは 自殺者の霊魂で、自殺者の霊魂は罰の為に1000人の霊のその世話をしないと成仏出来ないと言うシステムになって いる。舞台セット は何故かどこかの高級図書館か邸宅の書斎と言った感じ。棚にズラリと本みたいのが並んでるんだけど、それ等は 霊たちの資料であるらしい。現世の人に最後に会いたいと願う霊たちの世話をする自殺者の霊は皆白いヒラヒラの 衣装で背中に羽の様なレースの布を付けている。天使みたいな感じ。で現世の人に会いに来た霊と、その世話をする 自殺者の霊と、現世に存在する人間(は夢の中で会っている)でそれぞれの事情やぶつかりあいが展開 する。コレはすんません、オレ全く乗れませんでした。この設定にはテレビ「スカイハイ」を思い浮かべてたんだ けど、アレは霊魂が現世に生きる人間たちと積極的に交わりあって、現世の人間に何等かの変化をもたらして行く展開 が面白かったのだけれど。 この舞台上に登場する人物たちは皆が霊魂と夢の中の人物と言う抽象的な存在ばかり。霊魂と霊魂のやりとりを 舞台上で生の人間たちが演じても全くリアリティが無く、気持ち的にカスリもしなかった。役者さんたち決してヘタ では無いのに。死後の世界を表現する舞台とかっていろいろあったと思うけど、この舞台装置は何故図書館みたいなとこ ろなの? 何故自殺者は1000人の霊の世話をするの? 何故天使みたいな衣装なの? と見ててもなんで? な んで? の疑問符ばかりが乱舞してしまい、トラックで轢かれた女子高生の霊と現世の運転手の対決や、戦時中無念の 若死をした青年と、青年の死後に生まれたけれど自殺した青年の娘の霊との再会も感動どころかあまりのドッチラケ に役者さんたちに同情し てしまった。この手の「異次元」的世界観を舞台で表現するのは実に難しいと思う。それこそ唐十郎や野田秀樹的 な突出した美術感覚や演出センスが無いと観客は入って行けない。とは言えコレは初演時に好評を得ての再演だそう なので、オレがこんな風に感じたからと言って他のお客さんたちには好評だったのかもしれないので、ここはあくまで オレ個人の感想と言うことでご了承下さいませ。



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