「アパートメント」

劇団未成年 第3回公演(2009年1月28日浅草橋アドリブ小劇場)

 2007年 「霊安室」 2008年 「避難所あり」 に続く劇団未成年の三話構 成オムニバス第三弾!
 実は今回はオレも台本に参加してるので内側の事情もかなり分かってるのだけ れど、本番近くは稽古も見ていないし、自分の台本にどんな脚色されてるのかも知 らずに見ましたので、半分くらい客観的に観られたので書きますね。

 ここの人たちは年齢層からキャリアも様々なのだけれど、演出陣も役者陣も充実 していて、毎度しっかりしたモノを見せてくれていたので、そっちの方は心配無かっ たのだけれど、心配だったのは稽古の段階で出来ていなかった他の二作品の台本 (オレのはすっかり完成稿のつもりだったので、そのまま上演されると思っていた・ 笑)がどうなっているかと言うことでした。

 第一話は若い女子社員と浮気している単身赴任の夫の元へ、実はその浮気相手 と共謀して離婚を仕組んでいる奥さんが押し駆けて来ると言う物語。
 こーれは押し駆けて来た女房から愛人の存在を隠そうと翻弄する旦那の姿が二ー ル・サイモンかレイ・クーニー的ドタバタで楽しいのだけれど、共謀して女房が旦那さ んと離婚する手助けをする愛人の心情が、金の為だけに夫と付き合ってたのか、そ れとも少しは愛情的なこともあったのか? と言う点があやふやなのと、彼女が関わ ることで結果的には夫婦が仲直りする展開をどうするのかな……と思っていました。
 そしたら最後は愛人の役も見事に立っていて、夫婦も自然に元に戻って良かった。 あの台本を上手くまとめたものだなぁ、と思いました。

 第二話のオレの本に関しては、まーさかあんななるとは思って無かったので(笑)ビ ックリしましたよ〜。
 まぁ芝居は演出家の物でもある訳だから、自分のモノにしたいと言うのは分かるの だけれど、もっと早い時期に分かっていたら強固に反対していたでしょうね。
 今となってはヤラレタと言う感じですが。何より拒絶反応を起こしたのは、一昔前の 学生演劇でよくやってた様な、急にピンスポットになって脈絡もなく一人芝居が始まる と言う描写ですね。オレも昔暗転ばかりの芝居をしていた頃はやったことありますけ ど、一場モノのストレートプレイが書ける様になってからのオレの芝居にはあり得ない ですね。
 なので最初は「一体何が始まったんだ!?」と唖然としてしまって、コレで一体どうま とめるつもりなんだ? と思っていたら、ラストはオレの書いたポイントを最低限だけど 押さえてあって、終わってみると帳尻が合っていたと言うか、残ったテイストはアレ?  やっぱりオレの本だったのかな???? みたいな、不思議な感覚でした。
 良く言えば演出家の世界に見事に塗り替えられていました。悪く言えばキッチリ最後 までストレートプレイで書いてある本をどうしてこんなことするんだ。みたいなところでし ょうか。

 第三話は事情があって長いこと絶縁しているお父さんが、二人の娘が暮らすアパート を訪ねて来る物語。
 コレはお父さんと二人の娘が絶縁するきっかけになった、母親が死んだ日に何故お 父さんが家に帰って来なかったのか……ってことの謎解きがドラマのポイントだったと 思うのだけれど、そもそも全体のストーリーが出来上がってる後からそれを考えようと 言うのが無理な話で、本来その訳がネタとしてあって、それからストーリーを紡ぎ出す と言う手順のはずなのに。
 コレどうするのかなぁ……と思っていたら、まぁコレは「良く考えたなぁ」と言うよりは「 上手く切り抜けたなぁ」と言う感じでしょうか(笑)。
 だってお父さん自身も浮気してしまったと思って一夜が明けたら、横に寝てたのは 八百屋のチューさんだったって、そりゃ不可抗力と言う物でしょう。本当ならやっぱり 観ている方が「ああ〜〜そうだったのかぁ!」と唸る様な理由とか、それとも稽古場で 誰か言ってた様に、男としてはあることだけれど、絶対に許されない様な罪で、でもそ れを 「父帰る」 じゃないけど決定的な軋轢の後に娘が許す……と言う様なことかなぁ と思ってたのだけれど、結局は上手いアイデアが出なかったのかな。
 だから本当は最後に娘とお父さんの和解のシーンで「お父さーん!」「リカ子ー!」っ てひっしと抱き合うシーンをやれば良いと思ってたんだけど、あの理由では出来なかっ たのかな。

 ともあれ今作は自分も参加していたから言うのではないですけど(ホントですよ)過去 のオムニバス三公演の中では一番の完成度だったのではないかな。

 でもここのオムニバスのもうひとつの名物? である「幕間」の小芝居が間に合わな かったらしく、今回無かったのが残念。
 何かアレがあると一層盛り沢山で充実した感じがありましたものねぇ。



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