「アレックス」
普段言い知れぬ怒りの溜まっている人やストレスで衝動的に暴力を振るってしまいそうな
方はコレ見ると幾分中和されて良いかも(笑)。冒頭からカメラブン回して頭痛くなる、昔のぴあ
フィルムフェスティバルの入選作品みたいやなぁ・・・と思っていたら自分の彼女をレイプされた
男が犯人を捜してゲイバーへ、そこでいきなり喧嘩になって消火器で相手の顔を叩き潰しちゃうん
だけど、この描写が凄い。その後この事件に至るそれまでの過程が時間を遡って再現されていく
と言う「メメント」みたいな構成。そんで彼女がレイプされるところもやるんだけど、そこは一
部始終をそれまで振り回してたカメラをしっかり固定したカット割りなしの長回しで延々と見せる。
コレ嫌な人はスッゴイ嫌な映画だろうなぁ(笑)途中で映画館出ちゃう人もきっと多いだろうなぁ。
逆に好きな人は凄く好きなんだろなぁ(苦笑)オレはって? うん、ただ見世物的に暴力を売りに
した映画とかはツマランと思うけど、それを描写することによって背景から浮かんでくるモノを意
図した、しっかり考えて構成された映画なら面白い。この映画ももちろんそうなんだけれどね・・
・でもこの手の生生しい暴力は作品のテーマがどうとかって言うよりも、あまりに強烈で突出した
悪印象を残して作品を決定付けてしまう。ポーランドのキェシロフスキ「殺人に関する短いフィル
ム」とか思い出したけど、あれも死刑がどうとか言うテーマよりあのタクシー運転手を殺すくだり
が凄すぎて映画の印象を決定付けちゃってたもんね・・・。この映画のラストあたりで「未来惑星
ザルドス」のクラシック曲をバックに「2001年宇宙の旅」の胎児のポスターが意味ありげにデ
カデカと出てきたりするのだけれど、まだこの作品は優れた映画としては昇華しきれていないと思
う。荒削りで、粗暴だけれど、でも何か空恐ろしい怨念か執念みたいなモノを感じる。なんでこん
なモノを一生懸命作るヤツがいてしまうんだ! みたいな・・・んでもそれもそれでひとつの映画
の魅力ではあるんだよね・・映画を観ることって疑似体験だし。あと驚いたんだけどこの映画単館
じゃないんだって、渋谷でも銀座でも新宿でもやってるんだって、観たい人は早くしないとお客入
んないからすぐ打ち切りになっちゃうと思うよ(笑)。