「幕末あいすくりん伝説 房蔵くんがゆく」

SSTプロデュース vol.10(2006年12月23日新宿サニーサイドシアター)

コレはSSTプロデュースさんがまだ「夢彦プロデュース」と言う名前だった頃の坂田俊二さんのオリジナル 作品。内容は幕末に勝海舟と共にアメリカに渡り、日本に初めてアイスクリームを伝承した実在の旗本少年、 町田房蔵の物語。その頃京都では尊皇攘夷の嵐が吹き荒れ、新撰組や坂本竜馬が奔走し勤皇の志士たちと血で血を洗う 抗争が繰り広げられていた。そんな争いに幼い頃の親友が巻き込まれて行くことに心を痛めた町田房蔵はアイスクリーム の美味しさを通じて人々の争いを止めさせようとする。勝海舟、ジョン万次郎と共にアメリカに渡り、初めてアイス クリームを口にした時の房蔵の驚き、その甘い味=民主主義=日本の平和と未来であると考え、その味を日本に伝える ことを自分の使命と思い、作り方を教わって帰国する。そして尊皇派と幕府派で抗争を繰り広げる京都に乗り込んで 行き、人々にアイスクリームを食べさせることによって無益な争いを止めさせようとするのだった……。この着想が 面白いですねぇ。房蔵の戦い方は刀を持って向って来る相手の口にアイスクリームを投げ入れる。するとあまりの美味さ の為に相手は戦意を失って刀を捨てる。そんなアイデアが上手い舞台表現になっていました。しかしこの作品は歴史物 大作なのに小さな芝居小屋で7人と言う少人数で全編演じ切られているところも凄い。かつて夢彦プロジェクトは「ビ リー・ザ・キッド」や「ジャンヌ・ダルク」等の大河ドラマを小劇場・少人数で分かりやすく感動的に語ってしまうと ころが醍醐味だったのですが、本作はちょっと知られていないアイスクリームの伝承物語の中に幕末の歴史が語られて 面白かったですね。主役の房蔵は10代の少年なのですが、それを演じるのは夢彦時代からの看板女優加藤久美さん。 今回は幕末の旗本姿と言うことで全編スッピンで挑んだそうですが、劇中本当に希望に燃える少年の顔に見えてしまう のだから、いやー芝居って凄いなぁと思いましたね。個人的に夢彦時代の作品の再演をもっと希望しています。



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