「バトルロワイアルII」
そんなことがアリ得るワケもない絵空事、それをここまで血沸き肉踊るテンションとボルテージ
で圧倒的に見せる深作欣二! この映画は先に原作アリキで若いヤツとかは結構映画版に不満を抱いてい
る様だけれど、オレは何しろ深作だから観に行く派だから、原作のことなぞ知るもんか。前作に引き続き
今回も賛否両論あるけれど、オレは大好き!
前作は北野たけしのニュアンスを汲めなかった人にはただ
の殺し合い残酷映画と言う評価しか下せなかったと思う。確かに観客を惹き付けるのは子供に殺し合いを
させると言うショッキングで残酷な見世物、普段金髪の若造や地べたに座り込むヤマンバ女たちを快く思
っていない大人世代は彼等が理不尽に泣き喚いて死んでく姿を見て爽快感を感じる……と言う恐ろしい娯
楽の仕掛けになっていた。でもそれだけだったら誰も評価しないしあんなにヒットもしないでしょう。
観客を面白さに惹きつけておいて、実はその根底に高尚な命題が見えてくる……ってのが映画を観ることの
充実感になって、その映画は名作と言われ後世に語り継がれるのだ。前作の根底に流れていたのは親父世
代と子供世代の絶望的な断絶とそれがもたらした悲劇。たけしはそれを何を語るでもなく泣きを入れる
でもなく、ただその存在感だけで全てを表現してしまった(伝わらなかった人もいた訳だが)だから深作
監督をして「たけしの出演がなかったら作品が成立しなかった」とまで言わしめたのだ。
そう言う決定的
な根っこがあるから前作は面白かったノダ。巻き込まれた中学生たちは理不尽な試練を生き抜いて戦いの
中で自らの生について本能的に何かを見出す、そしてあのラストカット「走れ」は「生きろ」って意味だ
ったとオレは思ってる、ただ当時「もののけ姫」が流行ってて「生きろ」とカブルから「走れ」にしたの
かなぁと思った。
そして今回の「II」もやはりキーパーソンになるのは教師役の竹内力。何故か役名も
タケウチリキ! あのデフォルメ! 劇画を見ている様な非現実のリアリティー! でも観てると劇中に
取り込まれて行くボルテージ! これこそが深作演出の快感! 凄い顔してポージングした竹内力をかす
めて黒板に刺さるナイフのショット!! 鳥肌が立つほど深作欣二! 戦闘員になった中学生たちが上陸
艇でゲロ吐いてるからもしや……と思ったら……やっぱり大アッパレなプライベートライアンモドキ!
中盤藤原竜也たちと合流するまでの怒涛の様な展開には、もう涙が出るくらい面白がらせられる。でも後
半……だよなぁ……専門のサイトで若い奴等が「前作よりも酷い」と言われる所以は後半の混乱にある
のだろうなぁ……後半自衛隊との戦闘が激化してく中で藤原率いるゲリラたちと中学生たちの間に仲間
意識と友情が芽生えたりして行くのだが、その展開のエピソードが整理されていなくて何の伏線もなく唐
突に出てきたりするので、なんだかなぁ……と思ってしまうのだ。
今回藤原竜也に対抗する立場で中学生
のリーダー的存在になるあの金髪の若造(名前知らん)がもう少し芝居上手かったら大分違ってたかもだ
けど、最初敵だった藤原との友情の芽生えて行く過程とかも何だか分かんなかったよなぁ。それに他のキ
ャラたちのそう言った心境の変化もそれぞれバラバラに出てくるから観てる方も付いて行けなくなってし
まう。
特に突然女のゲリラに向かって「お姉さん」とか言いだした中学生の男は何だったんだ?……原作
を読めば分かるなんて絶対言わせないぞ。悪く言うともうなんでも良いから撮影したフィルムを全部強引
に繋げちゃえーみたいなガチャボコな印象を受けた。そもそもこれらはすべて脚本の問題じゃないかと思
うんだけど。でも何の伏線もなく唐突に心情を語って死んで行く者の姿にも胸を打たれるのは深作テイスト
だから? としか言いようがない。
撮影中のどの時点で倒れられたのか知らないけど、もう出来てしま
ったのは一本の映画なんだからあまり詮索する気もないが。今回批判されそうな世代間の断絶を世界情勢
(アメリカ批判)にまで発展させた展開はごく自然のことに感じられたけど。この映画の魅力は体制と反体
制の戦い、と言うより戦争と言う過酷な状況に追い込まれた人間たちの運命劇、だと思う。
なんの希望も
ない絶望的で先の見えない「答えはない」中で、人間が生きる中で本来あるべき刹那感が浮き彫りにされ
たことが感動させたんだと思う。特に人間の運命を激烈に体現していたのがタケウチリキ先生でした。ラ
ストは「明日に向かって撃て」やな……と思っていたら次に外国のカットになってナレーション「オレた
ちにも明日はある」って(苦笑)……伝えたいニュアンスを汲めば良しなんだろうけど、あの状況からど
うやって逃げ延びたんだ? って疑問、こゆの若い奴等は特に納得しないんじゃないかな……。