「ブラッド・ダイヤモンド」

んん〜甘い。コレと言って他に観たい作品も無く、でも映画館で映画が観たくて観てしまった。予告編 は良さげだったけど、監督が「ラストサムライ」ってのがヤだったんだよなぁ……そしたらやっぱし。決して退 屈はしなかったんだけどね、アレよアレよと言う冒険譚としてはなかなか面白い作品になってるんだけど、でも この物語の背景にあるダイヤモンドの採掘権を巡る血で血を洗う凄まじい内乱や溢れかえる難民たち、先進国が 貧しい国から搾取する社会問題を浮き彫りにするにゃ本筋が甘くてユルイ気がした。こう言う激烈な内乱状態の 国に野心を持った男が来て、現地人との友情が芽生えてヒューマニズムに目覚めて行くって展開は、カンボジアを 舞台にした「キリング・フィールド」や南米を舞台にしたオリバー・ストーン「サルバドル」を思い出すけど、 あの痛烈さには「ブラッド・ダイヤモンド」は及ばなかった。それは何故かと言うと、一番の原因は主人公 の描き方だと思う。いや〜デカプリオは素晴らしかったんですよ、無精ひげ生やしてスパスパたばこ吸って、良い 感じにくたびれた大人の男になってたと思うんだけど、脚本がね……現場で出会ったヒロインのジェニファー ・コネリーとのシーンで、自分の祖父がベトナム(だったかな?)で死んだと言う話を始めた彼女にデカプリオ が「アメリカ人は身の上を吐露するのが好きなんだよな」とクールに切って捨てたところはお〜う、良いじゃん!  って思ったのに、その直後に自分の母親はレイプされて殺され、父親は吊るされたって、自分も吐露するなよ!  あのシーンで全てがぶち壊しになった気がした。最初は単に特大ダイヤを手に入れる為だけに同行していた黒 人と次第に友情が芽生えて、最後は彼を助ける為に自分の命を張ると言うところも、それまでの友情が芽生えて 行く過程が上手く描かれていないので盛り上がらない、このラストはデカプリオが熱演だけに惜しい気がした。 結局この作品はアフリカが抱える恐ろしい内乱の実情を描くことと、主人公の持つ宿命や生き様を描くことと、 どちらも中途半端で上手くリンクしていない気がした。冒頭の村が襲撃される件の描き方からもう類型的で漫画 みたいでしたからね。この監督は「ラストサムライ」の時も思ったけど、本当の実情を知らない優等生のお坊ち ゃん(失礼)が作った様な感じでしたね。



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