「ブレードランナー」
今やハリウッドの一級監督になったリドリー・スコット監督といえば、何と言っても「エイリアン」と本作ですよねぇ。
こ〜のオープニング! 確かテロップは「2019年ロスアンゼルス」でしたっけ? ドーンと遠く夜景にところどころ炎が上がってる光景は全く鮮烈でした。
内容は、ロボットであることを知らずに生きてきた? ロボットが、自分の幼い頃の記憶も全てプログラムされた架空のものであったと知り、反乱を起こす……みたいな物で、それ程目新しいと思えることもなく、封切り当時は正直「あんまり面白くなかった」んです。お客も全然入ってなかったですからねぇ。
コレは初公開時にはヒットしなかったのに、その後口コミで評判が広がり、やがて大人気になって伝説にまで昇華した「グレートブルー」や「カリオストロの城」の類な映画と言っていいんでしょうか。
「南極物語」「炎のランナー」等で当時流行ってたヴァン・ゲリスの音楽も、当時はそんな良いと思わなかったのだけれど、後に車のCMに使われたりしてポピュラーになりました。
また本作の初公開版は監督にとって不本意な編集や音入れ? をプロデューサーに強要されたとかで、「未知との遭遇(特別編)」でスピルバーグが流行らせた「別バージョンを作る」時流に乗り「完全版」や「ディレクターズ・カット」等たしか3〜4つくらい違うバージョンが公開されたのではなかったかな。
凄く話題になったので、オイラも「ディレクターズ・カット」観に行きましたよ。んで初公開版と何が一番違うかというと、なにしろ初公開版では、主演のハリソン・フォードが人間に反乱を起こしているロボット(レプリカント)を探し出す刑事みたいな役なんだけど、彼の「語り」がず〜っと入るんですよね。その時の気持ちとか、自分のおかれた状況にぼやいたり。
んで、ディレクターズ・カットではその「語り」が全て消されてる。監督の意図としては「野暮なナレーションなんて入れるより、観客の想像力に訴えたい」ってことなのでしょうけど、初公開版で語りの入ってるカットをそのままに、声だけ消してるので、妙に間延びしてると感じてしまうところがありましたね。
見ててやたらにハリソン・フォードの顔が長回しやな……と思ったら、そうか、本来? ここには語りが入ってたんだ……と思ったり。
逆にディレクターズ・カットを先に見た方は、初公開版を見て「語りがうるさい」と感じてしまうのかもしれませんねぇ。
どのバージョンを最初に見るかによって、感じ方が変わるということでしょうか。
とはいえこれだけ人気のある作品だからこそ、様々なバージョンが出ても、それぞれを見比べる面白さというものもあって、成り立ってるんでしょう。内容が詰まんない作品なんて、別バージョンがあっても、どうでもいいですもんねぇ。
何しろ本作はあの未来のロスアンゼルスの情景ですよ!
ハードボイルドなハリソン・フォードや、ロボット人間のルトガー・ハウアー勿論良かったですけれど、内容よりもこ〜の未来都市の造形、それに尽きますね。
宣伝用の飛行船に映し出される「強力ワカモト」の映像とかは、大きな液晶ビジョンの並んだ渋谷の夜みたいですよね。日本人が屋台で焼き鳥売ってたりも楽しかったけど。
煩雑に発展した都市の夜景、降り注ぐ酸性雨、煙を上げて垂直離陸するパトカー等々……。昔の伝説になっている無声映画「メトロポリス」がモチーフになっているらしいですけど、とにかくこ〜の情景描写が素晴らしく、後々評価が高まっていく要因になったんですねぇ。