「ブラックホーク・ダウン」
アフリカのソマリアと言う国は、長い間イギリスの植民地だったのが1960年に
独立したのを皮切りに国内で民族同士の内乱が勃発し、大統領も追放されて無政府状
態で酷い虐殺や殺し合い状態になってしまった。
これをやめさせて新しい政府を樹立し、国民が安全に暮らして行ける様にと、アメ
リカを中心とする国連の軍隊が駐屯して武装解除させることになったのだが、コレに
反対する武装民族と国連軍との戦争になってしまった。
そんな時代背景の中で93年に本当に起きたアメリカ軍のヘリコプター「ブラック
ホーク」が撃墜された事件をリアルに描いた作品。
墜落したヘリコプターの乗組員を救出する為にアメリカの援軍が行くのだが、そこ
へ群がる様に武装した民衆たちが殺到し、米兵との凄まじい市街戦が展開される。
兵器等の装備で圧倒的に有利の米軍の死者19人に対して民族群は1000人の死
者を出したと言う。この戦場の臨場感は凄い。
特に市街を飛び交うヘリコプターの描写はリドリースコット監督の真骨頂ですかね。
戦場疑似体験モノとしては「プライベートライアン」が革命的な金字塔を立ててし
まったけれど、本作では何とかして敵の陣地から脱出しようとするアメリカ兵の基地
とのやり取りや援軍の必死の行動……それに対して武器は貧弱でも撃っても撃っても
ウジャウジャ沸いて来る民族軍との攻防が実にスリリングに展開し、次第に追い詰め
られて行く米兵と共に恐怖がひしひしと迫って来ます。
この殺しても殺しても後から後から襲って来る大軍団に取り囲まれて行く様は圧巻!
昔観た齋藤光正の「戦国自衛隊」思い出しましたね。
この映画を批判してる方々はアメリカのプロパガンダだとか、反戦映画のつもりが
なっていない……とか言っていますけど、この捉え方はどちらも間違っていますね。
この映画の正しい見方は監督の言い分「ソマリアへの米軍の介入が良いとか悪いと
か言っているのではない、ただそこで起きた事実を描きたかった」と言ってる言葉そ
のままでしょう。
それを「観客に答えを求めるなんて無責任だ」とか「アメリカ兵を英雄視してる」
とかって批判する人はもう映画観なくて良いです。
ストーリーテリングや明確なテーマを持つものばかりが映画ではない。この「その
場にいる様な臨場感」日常では決して味わえない様な状況の"疑似体験"も映画の持つ
大きな魅力でしょう。
他国の内戦への介入とか政治的なことはここでは背景にすぎない、自分もこのアメ
リカ兵たちの一員としてこの場に参加してる気持ちで……この場を体験することがこ
の映画の全てだと思いますね。
それも第二次世界大戦の様な50年も前の出来事ではない、ほんの10数年前に起
きたことですからね、現代の戦争の姿と言っても良いでしょう。
「良いとか悪いとか、そんな理屈は吹き飛んじゃうんだよ!」とよく体験者が語る戦
場の何たるかを痛い程想像させてくれました。人によってはリドリー・スコットの最
高傑作と言う人もいますね。