かの二ール・サイモンの戯曲で、ジェーン・フォンダやウォルター・マッソー主演で映画にもなった作品。 構成はオムニバスでカリフォルニアにあるホテルの一室を訪れた4組(正確には5組)の夫婦たちのそれぞれの騒動 が描かれて行きます。小劇場と言ってもこの劇団は過去にレイ・クーニーの傑作一幕喜劇「FUNNY MON EY」等も物にしている実力派劇団。今回も高円寺の住宅街の一角にカリフォルニアの豪華ホテルの一室を見事に 再現してしまいました。オレは今回上演された酒井洋子さんによる翻訳も78年のハーバート・ロス監督による映画も観て いたのだけれど、今回初めて生の役者さんが演じるのを観て、ここに登場する人物たちのニュアンスが分かり易く伝わ って来ました。特に映画でジェーン・フォンダが演じた、別れた夫の元へ逃げた娘を取り戻しに来た母親と、映画では マギー・スミスが演じたアカデミー賞にノミネートされてイギリスから夫(実は両性愛者)とやって来た女優さんの 話は役者さんの好演もあって魅力溢れるエピソードになっていました。演出も兼ねている西澤さんのコメディリリーフ 振りは相変わらずで、映画版でウォルター・マッソーの演じた、朝目覚めると隣りに娼婦が寝てて、そこへ奥さんが 到着してしまい……と言う爆笑編を楽しく演じていました。オレなんかはニール・サイモンと聞いただけで恐れ多 くて尻込みしてしまうのに、ソレを演れると言うだけでも凄いけど、ただちょっと難を言わせて貰えば、この 作品は4つのエピソードのそれぞれ違ったシチュエーションの夫婦の有り様を味わう趣向な訳で、いろいろ事情があった にせよ第一エピソードと第三エピソードの夫役を同じ役者さんが演じると言うのは勿体無かったですね。それに今回 特にその各々エピソードを演じた二人の女優さんが素晴らしかっただけに惜しまれました。とは言え二ール・サイモン のテイストを小劇場でここまで見事に再現して見せてくれる劇団は希少だと思いますので、今後の展開を期待したい ですね。