「チェンジリング」

 ついこの間かの硫黄島二部作があったばかりだと言うのに、まぁたまたク リント・イーストウッド監督の新作ですよ。しかも毎度ながらのヘビー級ドラマ !。

 何故こう次から次へと凄い作品が作れるのだろうと考えるに、イーストウッド は今ハリウッドの映画人としては紛れも無く第一人者なので、きっと掃いて捨 てる程企画が集まって来るんでしょうね。その中から厳選された企画を選ぶか ら、毎回凄い作品が生まれてくるのではないかな。

 そして勿論作品を選ぶセンスも凄いんでしょう。映画ファンとしてはイースト ウッドの作品は毎度極上の料理ですね。かつてマカロニウエスタンやB級ア クションに始まって長年のキャリアで培ったであろう映画作りのなんと見事な ことよ! 

 何より主人公にガッツリ感情移入出来る。そしてず〜っと主人公と一緒に 体験して行く物語感。悪戯に今流行りの手持ちブレカメラなんか使わない!  芝居を撮るのはしっかりフィクス(固定カメラ)ですよ。「観客にカメラを意識さ せてはならない」と言う黒澤流を踏襲してるんですかね、人物が動かなけれ ばカメラも動かない〜で観ている方も没入して見れるんです。ここで昔なが ら、と言う言い方は適切じゃないですね、本来映画はこうあるべきなんです よ。

 2時間20分どっぷり映画の世界に浸って堪能しましたよ〜。内容について は何よりこの物語が事実と言うことに驚かされる。
 観ているうちに「ええ〜〜っっ! こんなことが!?」「うぇっ、こんなことも?」 と言う事態に何度も驚かされる。
 事実の映画化と言うのはともすると地味で詰まらない物になりがちなのを、 どのくらい脚色してるのか分からないけど、見事に感動ドラマとして昇華して いますね。
 警察当局を悪者とする描き方が極端だと言う向きもあるでしょうけれど、こ うして観客も一緒に憎むべき対象を作って、それをやっつけると言うカタルシ スも映画のセオリーでしょう。この辺りは如何にもイーストウッドの怒りっぽく て、今にもダーティーハリーが出て来てマグナムで皆撃ち殺してしまいそう な雰囲気でした(笑)

 しかしここでの主役アンジェリーナ・ジョリーは普通に働くシングルマザー で、か弱いので、健気に頑張る姿が泣けます。
 アンジェリーナ・ジョリーって派手でエロいアクション姉ちゃんな印象が強か ったけど、ここでは線が細く、非常な窮地に追い込まれながらも子供の為に 頑張る姿は名優ジョン・ボイトの娘としての面目躍如って感じですね。

 他にも頼もしい協力者である神父を演じたジョン・マルコヴィッチも良かった ですけど、演技陣としてこの作品の一番の功労者はあの子供たちを虐殺し た犯人を演じた人でしょう! 
 嫌な役回りですけど、アレは難しいですよ。だってシナリオにゃ何故彼があ んなことをしたのかーとか、何故あんな人間になったか等、生い立ちとかの 説明も何も一切無いんですぜ。
 ただその存在感だけで「ああ、コイツならそゆことやりそうやな」と言う説得 力を醸し出さなければならない。ってコレ演じる方は大変ですよ。
 あの役者は素晴らしかったと思います。アカデミー賞も主演とか助演とか 華やかな人ばかりでなく、こうした脇で凄い実力を発揮して、実は作品の完 成度に多大な貢献をした俳優を見つけて「最優秀功労賞」とかやれば良い のになぁ。
 もしそんな賞があったらそゆ人見つけるのって映画ファンとしても凄く楽し いですよね。



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