「父親たちの星条旗」
60〜70年代、映画が一番面白かった時代に俳優として活躍したヒーロー、今は第一級の監督と
して精力的に作品を発表しているクリント・イーストウッド作品! コレは間違いなく御馳走だぁ。と勇
んで観に行きましたよ〜♪
モチーフになっているのは第二次世界大戦で激戦地になった、日本の領土であった硫黄島。そこで
誰しも中学か高校の歴史の教科書で見たことがあるであろうアメリカ軍の兵士たちが戦場に星条旗
を立てようとしている写真。オレも覚えています。あの写真、日本軍との激戦の果てに遂に立てた勝
利の象徴みたいでしたね。
ところがあの写真の真実は……と言うのが本作の内容で、あの旗は実は勝利の果てに立てたの
ではなく、この後まだ戦闘は続き沢山の死傷者を出していたのだという。
それにこの旗は実は最初に立てた旗を記念品として上官に上げる為のダミーの旗であった。その
後写真に写った6名の戦士は英雄として称えられたが、実は別人がまじっていたり、写っていたのに
顔が分からない為に英雄になれなかった兵士もいたり……。
写真に写っていた6名のうち生き残った3名は本土へ帰って英雄に祭り上げられるのだが、実
は政府が戦費を稼ぐ為の宣伝に利用されていくのだった……。
「一枚の写真が戦争の行方を左右することもある」と言うテーマが、非常に興味深く展開して行きます。
それが確かに歴史の教科書で目にした写真であるが故にのめり込みましたね。
ただ少し気になったのは製作がドリーム・ワークスでプロデュースがスピルバーグのせいか、冒頭延々
と続く硫黄島の上陸シーンが異常に「プライベートライアン」を思わせる。と言うか「プライベート…」以降の
戦争映画は全部「プライベート…」モドキになってしまったんだけど「スターリングラード」「ウィンドトーカ
ース」「ロングエンゲージメント」あと韓国映画の何とか等々。なので激戦描写に新鮮味は感じない。
だけどさすがドリームワークスと思わせるCGによる見事な戦場描写には実際そこにいて見ている様
な臨場感がありましたね。
けどこの映画は戦争の悲惨さを描くと言うよりイーストウッドの本題はいつも彼がやって来た「体制に対
する個人の反発=正義」なメッセージだと思うので、正直あまりにドリームワークスな戦場描写は作
品の統一性を損なう結果になってしまったかな……。
事件に関わる兵士たちもスポットを当てる兵士の数が多過ぎて、どの人物も描き方が浅い印象だった。
それに生き残って本土に帰りヒーローになる3人のうちの一人が主人公的に描かれるんだけれど、それ
もなんだか今ひとつ主役としての掘り下げが浅い気がした。
本当はもっと感動するハズなのにちょっと外してるかな……みたいな。ちょっと史実にこだわり過ぎた
のかなぁ。作者の姿勢としてあんまり作り込んでドラマティックに盛り上げるよりも、事実として淡々と描
くことに徹したのかな。みたいな意図も感じたのだけれど、どっちにしても中途半端な印象が残ってしま
った。
それとコレは2部作で、もう一本続いて公開された日本側から同じ戦闘を描いた作品「硫黄島からの
手紙」があるのだけれど、そのことも「2部作だからそれだけ作品のクオリティも分割されてしまったの
かな」などとも思ってしまった。
とは言え映画ファンにとっては紛れもない御馳走であることに間違いはありませんね。