「クレイマー、クレイマー」(79米)
シナリオの勉強方法として、自分が好きな映画を繰り返し観て自分で脚本を書き出し、自分なりに分析してみると言う方法があるんですけど。この作品を始めて観た時に「うう〜ん」と唸ってしまう程脚本が凄いと思ってて、本当にあらゆることをあらゆる方面からよく考え抜いていると言う感じなんです。それでその分析方法をやってみようと試みたことがあるんですよ。
で再見しようとDVDを借りて来たんですけど、DVDって特典映像があるじゃないですか、そこに撮影秘話について語るダスティン・ホフマンのインタビューがあって、それを観たら……なんと! オレがこの作品で「こことこことここが凄い」と思っていたポイントとなるシーンの全てが、最初からシナリオにあった訳ではなく、全て現場でダスティン・ホフマンが思いついたアドリブやアイデアが活かされた演技だったって言うんですよ!
それはどのシーンかと言うと、まずこの作品で一番有名なホフマンが「ダメだ」と言ってるのに子供が言うことを聞かずにアイスクリームを食べちゃうシーン。アレは現場でホフマンが子役の男の子とディスカッションして「どんなことでお母さんに怒られたか」ってことを話し合って出て来たアイデアなんだって。
それから突然家を出て行ってしまった奥さんのメリル・ストリープと喫茶店で話し合った後、交渉決裂して怒ったホフマンが立ち去り際にテーブル上のワイングラスを壁に叩き付けて割ってしまうシーン。それはホフマンが本番で突然やったアドリブで、その時のストリープの驚いた芝居は演技でなく普通に素で驚いてしまったらしい!
それに全編で一番唸らされる法廷シーンで、子供の親権を争う裁判が続いて行くうちに互いに夫婦の恥となる部分をあからさまにされ、いい加減ウンザリしてしまったホフマンが相手側にいる妻を見つめて首を横に振り、声には出さないけれど「もうやめようよ」とアイコンタクトをするシーン。観ている方は本当にドキッとしてしまうんだけど、それもストリープに向って現場でいきなりホフマンがやって、見ていた監督が「今何をやったんだ?」と慌てて問いかけたと言う……。
凄いですねぇ、目からウロコですよ。そんな経緯から監督はホフマンの名前も協同脚本としてクレジットしようかと提案したくらいだったとか。超一流の役者と言うのはこう言うものなのか……って、オレあんましDVDの特典映像とか興味ある方じゃないんだけど、コレばっかしは「ほぅ……」と思ってしまいましたねぇ。凄いです。
それと子役の上手さね、これもホントにこんな子供が何故? と思う程の名演をします。でも最近のマコーレ・カルキンとか「シックス・センス」の(何だっけ?)のインタビューを見ると生意気で全然子供らしさがなくって嫌いなんだけど……。
きっと本作の男の子も劇中は素晴らしい芝居してますけど、本人は生意気だったのかもしれませんよねぇ……。とは言えコレは本当に本当に素晴らしかったと思いますよ〜。