「第9地区」

 久しぶりにブツブツ言いながら帰って来ました。

 そりゃあの絵面見ればリアルなサイエンスフィクションかと思うじゃないですか。

 あ〜の空中に静止してる宇宙船なんてかのアーサー・C・クラーク「幼年期の終わり」 を思わせるじゃないですか〜。

 地球に流れて来た宇宙人の難民をどうするか……みたいなテーマって昔「ウルトラQ」 や「ウルトラセブン」でもやってましたよねぇ、あ〜ゆうのを最新のCG技術でリアルに掘 り下げてくのかと思うじゃないですか。だから観たいと思ったんですよ。

 日本で流れてた宣伝だって、宇宙人になぞらえてかつてのアパルトヘイトや難民の問 題を追求するみたいな、如何にも硬派な問題定義をする映画みたいな売りしてたじゃな いですか、ドキュメンタリータッチだって言うし。

 映画の導入部は本当にドキュメンタリーみたく、関係者たちのインタビューを重ねて見 せながら段々本題に入ってく流れはとても興味をそそられるんだけど。

 そしてあ〜のヌケ作な主人公が分不相応な責任者に任命されて調子コイて宇宙人の 居住区を訪ねて行く件は実にリアルで、この役者上手いなぁと思いましたよ。

 そんで例の液体を顔に浴びて、カメラに向かって「今のはカットしろ」とか、後で嘔吐し てるところも「撮るな」とカメラを遮ったりするところもリアルで興味を惹かれましたよ。

 この監督は凄いのかな……って、そしたらあ〜た、怪我した手から宇宙人の手が生 えて来ちゃうんだもの、アラ……といきなり鼻白んで来た。
 その後は一転して人類に追われる立場になった男と、故郷へ帰りたい宇宙人親子と の友情を育む冒険大活劇ですよ!

「カールじいさん」は別にオレ普通に楽しかったんですけど、アレで怒りまくってた人たち の気持ちが分かる。
 宣伝で観客に期待させてたのとあまりに内容が違うじゃないか! ってことですよ。近 頃そゆの流行なんですかね? 
 この「宣伝から受ける印象と実際の内容との違い」って JARO に言って問題にして貰 っても良いんじゃないの? 宣伝に偽りアリですよコレは。
 例えれば回転寿司屋に入ったのに途中からケーキしか回って来ないみたいなことですよ コレって。

 この作品には風刺とか教訓めいたことなんかな〜んにもありません! アパルトヘイト がどうとか言ってるのは単に南アフリカが舞台で宇宙人を難民として扱って "隔離" して ると言う設定に重ねてみただけです。

 この映画を作った作者としてはどうなんでしょう? 宇宙人と人間の友情と冒険の大活 劇を作ろうと思ったんでしょ? 宣伝に騙されてシビアなサイエンスフィクションだと思って 来た観客に観て欲しいと思うんですかね? 

 あのエビと呼ばれてる宇宙人は何かに似てるなぁと思ってたら、主人公が変身し始め て分かりましたよ(笑)クローネンバーグの「フライ」ですよねありゃ。
 そんで「アバター」のイーストウッド+バンダムもどきの軍人オヤジに対抗してか、マルコ ヴィッチもどきの短絡傭兵が登場するかと思ったら、最期はやっぱしガンダムまでが登場 してドンパチ合戦! ここまで来るともう勝手にやってろって感じだ。

 そこまでやっておきながらラストはまたドキュメンタリータッチに戻って関係者のインタビ ューとか映すんですぜ、もう胸が悪くなって来た。



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