「大日本人」
超面白いか超詰まんないかのどっちかなんだろうなぁ〜と思いつつ、封切って1週間の巷の反応はやっぱし
賛否両極に割れていました。ん〜でもやや「否」の方が勝ってる状況を見て「見るのやめよう」と思ってたんです
けど、他に見たいのも無いし、結局観て来ちゃいました。
で、ど〜かと言うと……巷で言われてる評価の基準は
専ら「笑えるか笑えないか」ってことで、松本人志の笑いを理解しているかどうか……なんて議論に終始していましたけ
ど、オレに言わせるとコレは笑いがどうとか、松ちゃん(大好きですけど)がどうとかって言うより、映画として世界観
を作るのに失敗していますね。"大日本人" と言う、松ちゃんがそのまま巨大化して怪獣と戦うヒーロー、と言う
発想は素晴らしいし、その内容を知ってから観たいって気も起きたんだけれど。
映画はこの「大日本人」として
活躍している大佐藤(松本)の私生活を取材するカメラの視点とインタビューシーンに、時おり出現する怪獣(劇中
では「獣」と呼ばれる)と巨大化した大佐藤とのCGによる戦いシーンで構成されている。普段の大佐藤は寂れた
一軒家でネコと一人暮らしをしている。バツイチで別れた妻と娘に月に一回会っている。大日本人は世間からは
迷惑がられている様子で、家の壁には「死ね」とか落書きされ、家の中でインタビューに応えている間も外
から石を投げ込まれたりする……って、変じゃありません? 実際にあんな怪獣(獣)が次々に出て街中で暴れてて、
それを倒す手段は大佐藤が巨大化して戦うしか無いのだとしたら、大佐藤は迷惑がられるどころか、ヒーローとし
て大事にされて当然でしょう??? それに獣が出て変身する時は自衛隊から依頼が来て近くの変電所へ行って儀式
を行った後に変身する。そんな大事な存在ならあんな寂れた一軒家に一人暮らしなんてしてないで国が用意した
豪華な官舎にでも暮して当然でしょう。
大佐藤の生活費は自衛隊からの給料が20万円と、身体にボディペインティングしたスポンサーの広告費
が30万だとか……コレもまぁパッと聞くと面白い設定だけど、苦しいですよね。「獣」に対して自衛隊が
戦わずに何故大日本人が戦わなければならないかの理由の説明もありましたけど「生き物を殺すのはよくない…」と
かってどうも歯切れが悪い。子供を連れて逃げたあの奥さんだって、大佐藤は先祖代々 "大日本人" の家系なんだから、
産まれる子供も当然 "大日本人" になることは分かってて結婚した訳でしょう? それにしちゃ別れてからのあの言動は
おかしいですよ。
……とそんな風に映画の世界に入り込むのに一番大事な状況設定におかしなところがいっぱいあって。
それが気になって作品世界を楽しめない。そりゃもちろん映画なんてフィクションだけれど、ひとつの大きなウソを
描くのには、それ以外の部分を極めてリアルに固めて行かなくちゃダメですよ。昔の「ゴジラ」だって「ウルトラマン」
だってもしこんな怪獣が現れたらどうなるだろう……って言う仮定がリアルに考え抜かれてるから面白いんであって、
ウソの設定の周りもまたグダグダなウソなんじゃもう「なんだかなぁ…」となってしまう。
作者の頭の中ではこれらが矛盾なく
統一感があって面白いと思ってるんでしょうけど、コレはやっぱりテレビの「ガキの使いやあらへんで」(大好き♪)
の浜ちゃんの読む一般視聴者からのハガキの質問に答えるネタのひとつくらいのレベルですね。映画はお茶の間で寝
っ転がってたまたまテレビ点けたらやってた……ってのとは違う。観客はわざわざ電車に乗ってチケット
買って劇場で長い時間並ばされたりしてやっと観るんですから。そりゃそれなりの期待感や、映画って物に対する格の高さ
みたいなことを感じてますよ。
まぁオレは前評判を読んだ上で観たし、大体こんなもんだろうと分かってたので結構
楽しく観ちゃったんですけどねぇ、怒ってる人の気持ちも分かります(笑)なにしろ一番気になったのは何故あんなに
大日本人が世間から迷惑がられてるのかと言う理由ですね、変身する時に騒音がするとか、足音が煩いみたいなことが
抗議の垂れ幕に書いてありましたけど、普通に考えたら怪獣たちをやっつけて貰う方が大事でしょう??? そんな訳
で、そもそもの状況設定がイビツなので、作品としての方向性も定まらず、あんなラストにするしか方法が無かったん
じゃないかな。この映画を評価する人もあのラストだけは許せないとか言ってますけど、あのラストがこの映画の有り様を
象徴していると思いますよ。