「脱出」

 コレを始めて見たのは高校生の時。当時毎月買ってた雑誌「ロードショー(懐かし!)」 のテレビで放映される映画の紹介ページで取り上げられていて、バート・レイノルズとジョ ン・ボイトが出てるアクション物……くらいのノリで観ていたら……。

 当時のウブい高校生としてはこのショック! この極限! いや〜映画好きの友達と翌日 興奮して語りましたねぇ〜あの田舎の野蛮な男たちが主人公たちを銃で脅して何をやらせよ うとしてたのか……理解出来ずに見てました(笑)
 凄い強烈な印象が残ってて、後々こんな凄い映画だったと言うことを知りました。

 一見変な映画なんだけども、見る者を夢中にさせる不思議な世界観がある。滅び行く自然 の渓谷を最後に見ようと、ダム開発によって無くなってしまう渓谷に渓流下りを楽しみに来 た都会に住む男たち4人、バート・レイノルズとジョン・ボイトともう2人。

 渓谷周辺に住む地元の人々はやってきた彼等に対して異常に排他的な目線を向ける……こ の美しい自然と無愛想な地元人たちとのアンバランスさが冒頭から「何かが起こる……」異 様な不安感をもたらす。

 あくまでリアルな人間ドラマの体裁をなしていながら、主人公たちが陥る状況にリアリテ ィがあって恐い! 

 ジョン・ブアマン監督は「エクソシスト2」や「未来惑星ザルドス」等、異様に変だけど 何か哲学的な深みを感じさせる異色作ばかり作っている監督。この監督の作品はどれも大好 きです。

 特に本作は途中「どうなってしまうんだろう」と言う異様な緊迫感の中に引き込まれる。 ハラハラドキドキしながら夢中で見て、終わってから作品全体のテーマは何かと考えてみる と、何か空恐ろしい哲学を感じてしまうのだ……。

 一歩間違うとただの異色作になってしまうところを、コレは後々語り継がれる大傑作にし ているところがスゴイ!
 全然金もかかってないのにね、正に演出力で観客を唸らせる。

 ジョン・ボイトが見えない敵を倒す為に切り立った崖を一人登って行くシーン、途中で危 機的状況に陥って神に救いを求めるところとか、人間性が生に迫って来て強烈でした。

 余談ですがブアマン監督と「太平洋の地獄」や「ポイントブランク」で組んでいる俳優リ ー・マービンがこの作品にもオファーを貰った時に「もし俺が演じればこの登場人物たちの 様に精神的な葛藤なんかせずに、平気で敵をやっつけてしまうだろう」と言って降りたらし いです(笑)

 その辺のところも、あのタフガイのバート・レイノルズが最初一番逞しかったのが負傷し て恐怖に駆られてしまう展開とか、面白かったですね。

 後にバート・レイノルズが「グレート・スタントマン」と言う映画で相棒のジャン・マイ ケル・ビンセントとビデオを見ながら「アンタのスタントは凄い」と語るシーンで見てるの がこの映画でレイノルズが激流に流される場面でした。



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