「デルス・ウザーラ」
"強き黒澤" の究極のヒーローであった「赤ひげ」の後に自殺未遂があって、コレが同じ
監督の作った作品なのか!? と思うくらい悲壮感に満ちていた「どですかでん」があって、その後
ソ連に渡って何年もの月日を費やした本作が出た訳ですねぇ。
オレの記憶で「どですかでん」と本作とどちらを先に観たのか定かではないのだけど、それまでに
持っていた英雄的な黒澤のイメージとは余りにも掛け離れたこの悲壮感には、戸惑いと言うより理解出来
ない程の理不尽な感情に襲われたものです。
「用心棒」を観て天地がでんぐり返る程感激して、以来ぴあを片手に黒澤と名の付く作品を観まくり、
伝記や研究本を読み漁って、全作品を観て、その生涯を知ることで作家と言う人生の何たるか、現実
と戦って生きる作家の姿を知ったと言うか、本当に本当に感化されました。
自殺未遂の後はそれまでの理想主義の勝利を描いた作品群とは
180度反転したかの様な作風に変わってしまいました。それでも本作における自然描写の美しいこ
と! 太陽と月を同じ画面に納めるドキリとする映像表現は紛れもなくクロサワで、オレなりに心の中に葛藤
と言うか、クロサワを理解したいと言う衝動から考えさせられたことで得たことは計り知れないと思っています。
それと作劇と言う観点から本作で学んだことは「全編回想で構成される映画でも、最後は必ず現代
に戻らなければならない」と言うことですね。