「ドクトル・ジバゴ」
こぉ〜れは未だに5本の指に入る好きな作品です。因みに後の4本は「用心棒」
「荒野の決闘」「哀愁」「タクシードライバー」ですがなにか?
こぉ〜れを観たのは下高井戸シネマ(改装前!)で確か「第三の男」と二本立てでした。まだ学生
で二十歳くらいだったんじゃないかな。も〜う感動して感動して(笑)神様に一番近い職業は総理
大臣でも大統領でもない、映画監督だと思いましたねぇ。
このデビット・リーンと言う監督はオレ的には全世界の今日に至る映画の歴史の中で、ベストワンの
映画監督だと思っています。特に「アラビアのロレンス」と「ライアンの娘」と本作を合わせて勝手に
史上最高のリーン三部作と言ってます。
本作は他の方のレビューを見ると壮大な歴史劇とかメロドラマとか言われていますけど、オレ的に
は若い頃観て何よりビビットに感じたのは要所要所にモーリス・ジャールの哀切極まる音楽に乗せ
て挿入される美しい自然描写でした。
人間誰しも雄大な海や草原や森を歩いたりするのって理屈抜きに好きじゃないですか、本作の中で
主人公のジバゴは幼くして母親を失うのだけれど、それが母への恋慕=自然の美しさになって行く
んですよ。
母が死んで、葬儀が行なわれる中立ち尽くすまだほんの少年ジバゴの目に映ったのは、風にな
びいて葉っぱを揺らししている大きな木々だった。その次のカットで棺の中で眠っている母の横顔!
も〜うコレが強烈でね、その夜ジバゴが一人でベッドに寝ていると部屋の窓を風に揺れた木の枝が
コツコツと叩く……お母さんなんですよ!
このキーポイントが強烈にインプットされて、その後のジバゴの切ない大恋愛や歴史に翻弄される
波乱の人生の中で、決定的な転機を迎える時には必ずジバゴの目には美しい自然の情景が目に
映る! 大自然=母なんですよ。
も〜う心がブルブル揺さぶられてね、映画館を出てからは道を歩いても足が5cmくらい地面から
浮いている感じでした。
そしてあのラスト、いつもここではネタバラシなんて気にせず書いているのだけれど、コレは書け
ません。あ〜のジバゴの義兄アレック・ギネスがジバゴの娘を見送ってさらりと言ったあの一言! も
〜う観てる方は泣いて泣いてね、エンドタイトルのバックに流れる小川の流れには神様がいました。
それとコレはオレが勝手に言ってる「文化人類学的映画」って言葉を最初に思いついた作品でした。
祖国ロシアを追放されるのを恐れてノーベル文学賞を辞退したパステルナークの原作を素に、アメリカ
とイタリアの資本によりイギリスのデビッド・リーンが監督したと言う、まさに国家・文化を乗り越えた人た
ちが集まってひとりの人間のドラマを作り上げた画期的な作品でした。
一般的にはリーンと言うと何より「アラビアのロレンス」と言われているけれど、オレはコレが一番好き
ですね。何年置きかにリバイバルされる度に必ず映画館へ観に行っています。