「ドラゴンへの道」

 4本のブルー・スリー主演作品のうち唯一本人による監督・脚本作品、音楽にも携わ っている。
 なのでブルー・スリーの人生観や格闘技者としてのセンスが直に観れる。

 監督と対立していたと言う前2作品「危機一髪」「怒りの鉄拳」に比べてこの作品で のリーの陽気な明るさはどうだ!

 ブルー・スリーの映画は暗いと言う人もいるけれど、この陽気さこそが本当のリーの キャラと思って良いんじゃないか。

 冒頭から大ボケ連発の三枚目ぶり、ノラ・ミャオにローマの名所を案内して貰いなが らも行くところ全てにいろいろイチャモンを付けて「香港の方が良い」と言うのも笑える。

 ここでのリーは仲間たちとのやりとりで常に笑顔を絶やさず、辛くても皆に希望を失 わない強さをアピールしている。
 原題の「The Wey of the Dragon」は「ドラゴンの道」つまりドラゴンとして生きる人 生観を示した様なニュアンスであり、リーが自分の「こうあるべきだ」と言う生き方を 体現した作品と言える。

 努力を怠らず、笑顔を忘れない、そして何より格闘技者としての哲学!

 ラストのチャック・ノリスとの決闘の前、お互い黙って黙々と準備運動を始める描写!  アクション映画であんな描写を見たのは初めてでしたよねぇ。

 そして腕も足も折られてもう戦える状態ではないのに、プライドを賭けて向かって来よ うとするノリスをじっと見つめ(もうやめよう)と微かに首を振って見せる表情。
 それに応えてかすかな笑みを浮かべてかかって行くノリス! このあたりの描写がまさ に格闘技に生きた人間だけが知り得る境地なのでしょう。

 それをここまで見事な描写で見せたリーは監督としても見事なセンスを持っていたと思 いますね。

 まぁ勿論全体のストーリーとか、拳銃の描写とか、手製の手裏剣とか、突っ込みどころ も多々ありはしますけど、それ等を凌駕して余りあるリーの体技・武道哲学を汲んで浸り ましょうや。

 とはいえ本作で一番笑えるのは敵役の空手の名人の日本人ですよねぇ。最初日本人とい う設定なのを知らなくて観てたらリー(役名タン・ルン)を前にして「お前〜は、タンル ンかぁ」ってリーに向かって言うシーンで、コレはひょっとして日本語のつもりなのか ! と耳を疑ってしまった。

 そしてボコボコにやられて立てなくなって「あいたっ……あいたっ!」って痛がるんだ もの「あ〜やっぱコイツ日本人なんだ! ぎゃはははははは……」とアゴが外れるかと思っ た。



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