「英国王のスピーチ」

 アカデミー作品賞・監督賞・脚本賞・主演男優賞を独占した話題作!  小さな新宿武蔵野館は大混雑! なんでもっと大きな劇場でやらねぇんだ! と 怒ってみても始まりませんけど。

 身分や立場の違う者同士がひょんなことから関わり合ってひとつの目的の為に 協力していくうちに友情を育んで……って定番のシチュエーションで描く、英国 の王様編!

 イギリスの国王の次男であるジョージ6世は子供の頃からの吃音症に悩み、民 間の言語聴覚士ライオネルと出会う。

 ポイントはこのライオネルなんですよ! この人普通のおじさんなんだけど、相 手が王様といえども自分の患者には対等に接するという方針から王様を名前で呼び、 決して「閣下」とはいわない。
 そして国王にも臆することなく自分にフレンドリーに接する様にと要求する。

 ジョージ6世役のコリン・ファースが主演男優賞ならライオネルを演じたジェフ リー・ラッシュという役者さんは助演男優賞あげなきゃ可愛そうですやねぇ。

 この人ちょっと検索してみたら……あの1996年の「シャイン」で主人公の知的障 害? のあるピアニストを演じたあの人だったんですか!? 
 コレはギョエ〜ですよ、全然解んなかった! こゆあまり目立たないけれど脇で 長年活躍している役者さんって、驚くべき実力を持ってらっしゃるんですねぇ。

 しかして本作は宣伝で「涙が止まらない」みたいなこと言ってるけれど、吃音症 の国王を医者が治すというだけの話でどうやって盛り上げるのだろう……と思っていた。

 ライオネルが国王を普通の人として接するので、観客もそれが国王だとは意識せ ず、普通に吃音に悩む人という親近感を持って、医者との触れ合いみたいなテイスト で物語は進んで行く。

 しかし後半兄が王位を退いた為に国王になったジョージ6世が、いよいよ攻めて 来たヒトラーの為に戦争に突入する際、その決意を国民たちに促す為ラジオを通じ て演説する場面では、いきなり世界観がドワッと広がって、普通の人だった彼が国王 であることが前面に出てくる。ここの描写はまさに圧巻でした。

 確かに泣けるんだけど、コレは感動というより、大きな歴史の裏側で起きた出来事 を観たという感慨に近いですね。
 ここはまさに目も眩む様な展開で、作り手側の意図したテイストが確かに伝わって 来て、素晴らしかった。



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