「エターナル・サンシャイン」

 恋愛に失敗した相手を忘れたい人の為に、その相手の記憶だけを頭から抹消してくれ ると言う便利な医者がいると言う設定。

 物語はある女(ケイト・ウィンスレット)と喧嘩別れした男(ジム・キャリー)が仲直りしよう と彼女を訪ねて行くと、彼女は彼のことを知らんぷりするばかりか、まるで彼のことを初対 面の様によそよそしく振る舞う。その上目の前で新しい彼氏とイチャついてみ せる! コレはおかしいと思ったらある会社から封書の手紙が来て、彼女は貴方の記憶 を消去したので今後貴方との過去については教えないで下さい。と言う趣旨の内 容。頭に来た主人公はよしそれならと自分も彼女の記憶を消すべく同じ医者を訪ね るのだが、自宅で眠っている状態で記憶を消す作業をされているうちに睡眠中の夢の中 で自我の意識に目覚め、消されて行く彼女の記憶を消すことに耐えられなくなって、消され ない為に記憶の中の彼女を連れて逃げ出す……と言う展開。頭脳の中で錯綜する記憶が 消されて行くシュールな描写が繰り広げられて行く。

 内容的に何か日本の映画にありそうなセンチメンタル恋愛モノみたいだった。かつての 大林宣彦を思い出しましたね。それに手持ちカメラのぶれ具合やノスタルジックな映像処 理はまるで岩井俊二の世界だ。

 例えどんなに酷い喧嘩別れをしようとも、恋人同士だったのだから楽しかった思い出も あるハズ。それらも一緒に忘れてしまって良いのか! と気がつく主人公には共感が持て る。忘れてしまいたいと思っても、例えどんなに酷い思いをした記憶でも、それも含めて愛 しむべき自分の人生なのだから、誰に取っても自分の人生は大切なモノなのだから…… と言う思いに駆られてジーンと来ます。

 普段ハチャメチャなコメディーが多いジム・キャリーの様な役者がグッと抑えたシリアス な芝居をすると深みのある抑制された実に良い存在感になるものだ。しかしいかんせん 惜しいのはケイト・ウィンスレットがオレはダメでしてねぇ。この彼女との思い出を守る為 にジムは奮闘するのだけれど、ここでのウィンスレットはなんだかアバズレ感が強くって、 劇中ジムが感じている様な胸がキュンとなるような愛しさがオレには感じられなかった。
 彼女のキャスティングは作者側の意図なのかもしれないけど、例えば昔の可愛らしかった メグ・ライアンとかだったらもっと胸キュンの感動モノになってたのではないかな。

 こうゆう物語って、発想は結構出来てもその発想を上手く活かした人間ドラマにまで作 り上げて行くことが難しいんだよね。その点この映画は途中脇役たちが微妙に本筋と絡 んでくるところなんか良く出来ていたし面白かった。主役の男女のこともよくある痴話喧 嘩やデートの描写は楽しくて、男女の性(さが)や切なさが浮き彫りにされて最後の方と か結構胸が熱くなったんだけどね、ちょっとやっぱ今ひとつだったのはケイトさんのせい かなぁ……。
 あとジムから彼女を取っちゃうヌケ作の若造どっかで見たことあるなぁ……と思っていた ら、あのロード・オブ・ザ・リングの坊やだったんですね。いと情けなかったし。



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