同プロダクションの若手研修生による卒業公演で、かの劇団キンダースペース主催の原田一樹作・演出作品。 コレは原田氏が15年前に書いた戯曲で、その当時さらに15年前の学生運動華やかなりし時代を思い出して書かれ た作品だそうです。そこでの作者の自伝的な物語が展開されます。主人公は漫画家を目指す少年で、彼を取り巻く家 族や友人達の有様が彼の描く漫画を劇中劇として交錯させつつ学生運動や当時の世相が時にはハチャメチャなギャグ で紡ぎ出されて行く……。研修生の卒業公演と言うこともあって、経験は無くとも若いエネルギーで一杯な役者さん たちが様々なキャラクターで次々に登場し、賑やかな作品でした。作者の脳裏に過ぎっている思い出のイメージが散 文的に乱立しつつ自己の成長が紡ぎ出されて行くと言うコンセプトなのだろうけど、如何せん今ひとつ主軸となる物 語なりテーマなりが浮き彫りにされることが無かった。当時の世相を懐かしむアイテムやキャラクターは楽しいんだ けれど、だから何?……と言う大きなメッセージなり主人公の抱えるドラマなりがピンと来なかったのが残念でした。 とは言えどの役者もやる気満々で一生懸命な気概が伝わって来て、気持ちの良い舞台でした。