「フランティック」
俗によく 「ヒッチコックタッチです」 って宣伝文句や映画の批評を聞くけれど、そう銘打ったモノに限って観てみると 「どこがヒッチコックやねん!」 と突っ込みたくなること必須と思いません?
そもそもヒッチコックのタッチって誰にもマネ出来ないんじゃないだろうかと思う。影響受けてる監督が沢山いるのは分かるんだけど、出来たモノはやっぱり違う。
何でこんな話かと言うと、このロマン・ポランスキー監督の本作こそはオレ言ってるんだけど 「一番ヒッチコックに近い」 作品だと思うんですよ。
監督さんは意識してるかどうか知らんけど、とにかくいきなり旅行先で奥さんが行方不明になる導入とか、言葉も通じない外国での孤独感とか、得たいの知れない人物たちの躍動とか……とにかく雰囲気やタッチがそっくりです。
ただポランスキーの凄いところは、それでいてやっぱり 「ポランスキーの映画」 になっていると言うところ、本作では途中から現れて主役のハリソン・フォードを助ける謎めいた女、エマニエル・セイナーが良い!
このヒロインの扱いと情緒はヒッチコックのそれとは明らかに違う。それに夫を演じたハリソン・フォードの、こ〜の孤独感はどうだ。
このスリリングな展開とドキドキワクワク感はまさにヒッチコックのそれでしたねぇ。
それまではあまり明確な説明のなかった主人公の職業を途中ヒロインに 「僕は医者なんだ」 と語るところは後の 「戦場のピアニスト」 でナチスに見つかった主人公が職業を聞かれて 「ピアニストです」 と応える場面を思い出しますね。
やっぱり同じ監督なんですよ。モリコーネのサントラも好きです。