「フューリー」

 戦車戦を売りにして、冒頭ドイツとアメリカの戦車の性能の違いを謳ってるくらいなんだから、もっとそこに特化した内容なのかと思ってたら「プラトーン」〜「プライベートライアン」に連なる戦場の地獄をリアルに描いた映画でした。ブラピに鍛えられていっぱしの戦士になってく若造はマンマ「プラトーン」のチャーリー・シーンにダブりましたね。

   なので目新しさは無いけれど、戦車の描写はやっぱし凄くて、タミヤの1/35シリーズ世代としては懐かしく見入ってしまった。米軍から「バケモノ」と呼ばれるドイツの戦車を「ティーガー」って訳してたけど「タイガー」でしょ! プラモの箱にもタイガーって書いてあったし(笑)

 ドイツ軍のもアメリカ軍のもいっぱい作ったけど、やっぱし「コンバット」やアメリカ映画でドイツは悪役でしたから"善玉"のアメリカ軍のが沢山持ってた。

     でもアメリカの戦車よりドイツのが大きくてカッコ良いんですよね。ここに出て来るタイガーIもシャーマンに比べて大きいけれど、何と言ってもキングタイガーだよなぁ。映画には現存するタイガーIの実写を使ったらしいけど、たった1台ですからね。戦勝国のはいっぱい残ってても、敗戦国のは日本のゼロ戦みたく殆ど残ってないのかな。出来ればこのクオリティで「バルジ大作戦」をリメイクして欲しいですねぇ。

 とはいえタイガー1台VSシャーマン4台の戦闘シーンは見せましたね、この手の戦争映画好きには堪らない完成度だ! それに引き換えラストの戦闘はリアリティが無くて白けるとか手榴弾でやられたのに死体が綺麗だとか突っ込みも多いけど、オレもそう思いました(笑)今の観客は目が肥えているから〜感傷的に持って行く為にリアリティを欠いた描写をするのはマイナス点なのかもしれません。

 一番の見所はブラッド・ピットが演じる人物像です「プライベートライアン」のトム・ハンクスみたくヒューマニストではなく、戦場という狂気に駆られた「突撃隊」のマックィーンや「攻撃」のジャック・パランスを思わせる。戦場で兵隊たちを束ねるリーダーとして、理解し切れない言動も含めて恐ろしくリアリティがある。

 特に中盤占領した街でドイツ母娘の家で隊員たちが食事をする件をどう見るかで評価が分かれるのではないかな。それと終盤走行不能になった戦車に5人が立て籠もって玉砕する件に違和感を感じるかどうか。

 作者の目論見としてはそれまでの展開で、そうなることが必然に感じられるハズだったのではないかな。自分たちが生き残ったのは運が良かっただけで、死んで行った戦友たちと同じ狂気の中で生きて来た。そんな彼等が行く先にも必然的にああいう幕切れが待っていて、彼らは必然的にそれを受け入れた……とオレは解釈しました。まぁ反戦を謳った戦争モノの幕切れとしては定番ということもあるけれど。

 そしてふと、こういう映画をポップコーン喰いながら踏ん反り返って楽しんでいる我々観客が一番冷酷なのかもしれないなぁ、なんて思ったのでした。


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