「崖の上のポニョ」

 映画の日に何か観ようかなと思い、新しく出来たピカデリーにしようと思ってフラフラと向かう途中、いつの間にかぽ〜にょぽ〜にょぽにょと口ずさんでいました。

 気が付くとチケットを買い、案内のお姉ちゃんに促されるまま上映スクリーンまで延々と続くエスカレーターを登って……。バルト9は8階までエレベーターで登るのが面倒臭いけど、こちらは全館映画館の代わりに3階でチケットを買って確か9階? まで上がらなければならないのが面倒臭いですねぇ、もっと下の階でやってる新しい作品なら良いのでしょうけど。まぁそんな文句言ってても仕方無いんだけど。

 「もののけ」以降の宮崎アニメは「千と千尋」「ハウルの動く城」と最早シナリオが破綻してどうなってるのか分からない宮崎監督の幻想風景的なイマジネーションを楽しむ的作風になっていたし、今作も観る気は無かったんですけど、あの唄に洗脳されてたのか。
 観た方の「完全にイってしまっている」とか「登場人物の行動がみんな尋常でない」とか「途中から物語が暴走して行く」とかのいつもの? レビューを読むにつけ「どれだけぶっ飛んでるのか観てみよう」的な興味で観て来ました。

 そしたらコレが、それ程の違和感もなくフツーに物語を楽しんだのでした。いつもの仕組みがどうなってるのか分からない摩訶不思議な魔法使いキャラとか出て来ますけど、それが物語を破綻させるまでのハチャメチャ振りとまでは感じなかった。
 むしろ良い感じに不思議なサジ加減で気持ち良かった。今回は単純に宗介とポニョの物語と言う大きな縦筋がハッキリしているのでそれに付随する不思議描写も心地よく受け入れられたのかな。

 あのイマジネーション炸裂な天変地異も全て最初にポニョが開け放ってしまったエネルギーの泉? みたいなのの影響なんでしょう。荒波に魚みたいな目があって猛り狂う中、無邪気なポニョが走って来る様は自然の驚異を目にした時に畏怖と同時に感じるワクワク感を具現化したみたいだと思った。
 崖の上の家と保育園と老人介護施設の位置関係とか、また港の船の行き来のシステムとか、の辺りはリアルに設定されているし。街が水没してると言うのに人々の様子がのん気過ぎるって言うけど、設定としては誰も死んでないんでしょう。

 監督は決して何も考えずに作ってる訳じゃないと思いますよ(当たり前か)「ここがおかしい」「どうしてこうなるんだ?」とヒステリックなまでに展開の不条理を突っ突き出してる方もいますけど、今作に限ってはそんな理屈的指摘が全部野暮に感じられてしまった。いや〜オレ楽しかったですよ(笑)。

 昔は人間だったらしい海底に住む魔法使いのおじさんと、いきなり海面を上向きに流れて来る美輪明宏みたいなデッカイ奥さん。何で? どうして? でなく「おお〜不思議だぁ」神秘的で良しとして楽しみましたね。

 ラストは何だか言い知れぬ嬉しさでぽ〜にょぽ〜にょとエスカレーターをスイスイ降りて来たのでした(笑)。



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