「激突!」

 コレは名実ともに今映画監督の第一人者と言っても過言ではないスティーブン・スピルバーグのデビュー作として認識してる方は多いんじゃないかな。

 元々はテレビドラマだったのをあんまり面白いんでアメリカ以外の国では劇場公開したと言う作品。
 ストーリーは至ってシンプルで、出張の為に郊外のハイウェイを乗用車で走っていた男(デニス・ウェーバー)が途中トロトロ走ってるタンクローリーを追い越して行ったら……そのタンクローリーが怒って追いかけて来て、煽って嫌がらせを始めたかと思ったらわざと追い越しさせて対向車と衝突させようとしたり、後から押して列車の走る踏み切りに突っ込ませようとしたり、嫌がらせはどんどんエスカレートしてしまいにゃ殺し合いになって行く……と言う。

 不条理ホラーな展開なんだけど、コレが怖くってねー。原作と脚本はかつてロジャー・コーマンのアラン・ポー物の脚色を手掛け、またアラン・ドロンとミレーユ・ダルクのサスペンス「愛人関係」やオカルトブームが生んだ傑作「ヘルハウス」の原作者でもあるリチャード・マシスン。

 コレただただのべつ幕無し追いかけっこな内容なんだけど、終始決して運転手の姿は見せず、不気味な鉄の塊りが無言で追いかけてくる不気味さは凄かったですね。
 特種なSFXがあるでもなく、全編昼間でのどかなハイウェイで撮影されてるのにこの恐怖演出はただ事ではない。

 このタッチが認められてかの「ジョーズ」に繋がるんですね。スピルバーグはこの時確かまだ27歳くらいだったんじゃないかな。凄いですね。
 昔日曜洋画劇場で放映した時、淀川長治さんが 「冒頭のスタッフの文字の出し方が粋ですねぇ」 と言ってたの思い出します。確か車でトンネルに入って暗くなる度にキャスト・スタッフの文字が出て来るんじゃなかったかな、そうして都会から段々田舎の風景に変わって行くんでしたね。



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