「八月の狂詩曲(ラプソディー)」
黒澤が「乱」の後「夢」に続いて作った作品。何しろ井川比佐志等日本のオジサンたち
の中に一人スラリと立つリチャード・ギアのカッコ良さに日本人としては打ちのめされました。
原爆で夫を失ったお婆ちゃんの家へハワイ(だったかな?)から甥のアメリカ人ギアが遊びに来て他の
孫たちと遊ぶ。ここでの吉岡秀隆君を筆頭とする若い孫たちの台詞が現代劇なのに非情にヘンでした。
でもまぁ、ここでは黒澤御大のなさることだからと、こちらの観る姿勢が許してしまうのは黒澤だからで
あって、逆に言えば黒澤映画を観るのに観客がそんな妥協を強いられるなんて……と言う寂しさもあり
ました。
でも皆さん、亡くした旦那さんを思い続けて生涯を暮らすこのお婆ちゃんの純情には感動しますよ。吹
きすさぶ雨の中、旦那さんを探して行くお婆ちゃんの傘がバッとオチョコになった時、これぞ黒澤の
人間賛歌だと素直に拍手したい気持ちになりました。