「EXIT〜避難所あり〜」

劇団未成年第2回公演(2008年2月13日浅草橋アドリブ小劇場)

 シナリオライターの金子成人さんが主催する劇団「成人式」の下部団体? であ る「未成年」の第2作は、前年の3話構成によるオムニバス「霊安室」に続くオムニバス作品 で、今回のお題は「避難所」。

 避難所と言えばそれこそ台風とか地震とか、考えられるシチュエーションは色々ある。それ ぞれに違った状況設定で、その避難所に集った人々のドラマが三話三様に描かれると言う 趣向。
 前回の「霊安室」はそれぞれに登場する"ご遺体"と、それに関わる人々のドラマと言う構 成でなかなか面白い着想だと思った。それを受けての今回はどうだったでしょう? 正直様 々なバリエーションで見せるオムニバスのお題としては「避難所」と言うのはちょっと難しかっ たのではないかな? 

 三話のうちの第一話は地方の村が舞台で、そこで起きた大地震の為にテンヤワンヤする お役所の話。ガンコに家に閉じこもって非難しようとしないお婆さんに手を焼く等のエピソー ドも登場するが、本筋は村から非難して来た人たちの話と言うより、そこの村長さんと過去 の誤解が元で家出していた娘との和解等、家族のドラマがメインになっている。お題のイメ ージからもっとクライシスな展開を期待していた向きからすると、こういう話なら特に「避難所」 でなくても良いんじゃん? とちょっと拍子抜けしてしまった。
 それとお父さん役の役者さん、キャリアもあって風格も佇まいも良いのだけれど、初日と言 うこともあってか? まるでたった今セリフを覚えたばっかりと言う感じで、まったく役柄が身 に付いていない様に見えたのが残念。きっと本番の回を追うごとに良い感じになって行くの だとは思うけど。

 そして第二話の舞台は何故か古い映画館。それもどうやら過去に燃えて無くなってしまっ ているハズの場所に、若い娘と若者がタイムスリップして迷い込んでしまったらしく、娘はそ こで若き日の父親に再会する。話のシステムが良く分からなくって、あまり楽しめなかった。
「避難所」と言うお題から何故こうしたストーリーが出来てしまったのかな……と考えてしま った。

 そして第三話は東京にスズメバチの大群が発生し、人々は文字通り「避難所」へ閉じ籠 もって、外へは一歩も出られないと言う状況設定。
 お、やっと期待していた様な避難所の話が来たな、と思った。そこへたまたま集った、そ れぞれに我がままで事情を抱えた人々と、彼等に手を焼くお役所から来た世話役との遣り 取りが中々面白く描かれて行きます。
 中でも飲んだ暮れオヤジの水島涼太さんのお芝居は力を抜いて舞台をスイスイ泳いでい る様で、観ている方もリラックスして作品世界へ入って行くことが出来ます。
 そして物語は、いつまでも続く監禁生活に業を煮やした登場人物たちが、世話役の言う ことも聞かずに扉を開いてしまうと、外にはスズメバチなど全くおらず、騙されていたことに 気付く。
 そしてその訳は自分たちが「赤ちゃんポスト」ならぬ「大人ポスト」に捨てられ、家族や世 間から見放されたのだと言うことを世話役から聞かされる……。この展開は中々鮮烈でし たね。へぇ〜そう来たか、と言う感じ。でも残念なのは、その発想がそのまま落ちになって しまうこと。
 サァこれから各々がそうとは知らぬまま家族や会社から見放され、捨てられた事情〜心 情が描かれて行くんだな、と面白くなって来たところで劇は終わってしまうのだ。
 コレでは全くアイデア止まりで、言ってみれば起承転結の最初の「起」だけを見せられた 感じ。勝手なことを言うと、この第三話だけを1時間半の一場モノにした方が作品としては 良かったのではないかな……なんて思ってしまった。



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