「人刺し指」

R領域 第一回公演(2005年4月8日中野スタジオあくとれ)

家族を殺された死刑囚の死刑の実行、つまり「殺人」を遺族が行うと言う法律が施行されたと言う設定で、 舞台はその死刑囚と家族が死刑を執行する為に会する部屋で、登場人物は刑の執行に立ち会う刑務官と死刑囚、そ れに娘を殺された両親と妹の6人で展開する。なんだか面白そうな設定だなと思ってたんだけど、結構シビアな辛い ドラマかと思いきや、マイクを手に歌いながら登場する出演者たち、ギャグの連鎖でなかなか前に進まないストーリー、 そして劇中空間を越えて再現される殺人現場・・・そうこのパターンはまるっきしつかこうへい「熱海殺人事件」。 演出も芝居も展開もつかを踏襲しつつ、死刑囚と執行する家族と言う架空の図式を持って来たのは良いんだけど、いか んせんコレは「熱海・・」の様に明らかにされる殺人現場の真実に浪花節も気持ちに訴える情念も感じなかった。そもそもコレ は作劇上の事件の組み立て方に問題があるのではないかな。冒頭から登場していながら途中唐突に語られる母親のふしだら な生活振りとか、娘が自分で死のうと思ってたところへちょうど良く入って来た強盗に殺して貰おうと言ったこととか、 物語の主眼となる殺人事件の真実が、犯人と被害者がそれまで全く接点の無かった場当たり的な事件では謎解きも何も あったものではない。「熱海・・」の様に物語全体があの切ない殺人に至る過程に活きていなく、まるで取って付けた 説明の様だった。そもそも最初から舞台のセットからして机があってソファがあって、そこへ刑務官がいて家族と死刑囚 を引き合わせ、しかも刑務官はその場でためらいもなく死刑囚の手錠を解く・・・ってなんかヘンだな? と感じたの はやはり台本全体の作りが間違ってるせいなんだろうな・・と思いました。とは言え役者さんたちは皆上手い! 特に殺人 現場の再現で娘を演じて見せるお母さん役の女優さん、マイクを持っての登場の歌も良かった(笑)役者さんたちが 上手いので物語に不備を感じつつも最後まで飽きずに観れました。けどここまでつかを信奉するならいっそのことこの メンバーで「熱海・・」を見てみたい気がしたなぁ、苦労して「もどき」を作って失敗するよりもその方が妥当な のでは?・・・なんてエラそうにいろいろ言ってすんません。



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