「いなほ銀行上石神井出張所」

TOKYO ROCK'N PARADISE Vol.18(2004年2月13日新宿シアターブラッツ)

俳優の布施博さんの主宰する劇団「トーキョーロックン・パラダイス」の18回目の公演。旗揚げから 結構見せてもらってるんだけども、初期の頃は布施さんが舞台にバイクを持ち込んだりして皮ジャン反抗期みた いなのが多くて「オイオイ・・」と思うとこもあったのだけれど、途中から布施さんの人の良さを活かしたホー ムドラマ的な作品もあって、そっちの方がずっと良いなと思ってて、近作はもっぱらそっち系の芝居になってき てます。でも今回は異色で、銀行強盗の立て篭もりモノ! ストーリーは若いヤツが銀行強盗に入るんだけれど、 計画がズサンだったために途中でアッサリ諦めちゃう。ところが解放されて今出て行ってマスコミに囲まれると ヤバイと言う殺人罪のヌレ衣を着せられて逃亡中だと言う男をメインに、女子高生の扮装をした主婦もいたり・ ・・と言うドタバタが繰り広げられると言うお話。場面転換のないクライムストーリーで、その場に居合わせた 人々の人間模様が浮き彫りになってく・・・みたいな展開なんだけど、ドラマ的にはイマイチ盛り上がらなかっ たなぁ・・・初っ端から強盗が飛び込んで来てアレヨアレヨと言う怒涛の展開で入って行く導入部とか皆さん上 手いし良かったのだけれど、その後の展開で、タマタマ居合わせたその日に時効を迎える逃亡者が「今解放され て出て行ったら警察に身元がバレて捕まってしまう」から立て篭もりを続けてくれ、って言う設定はアイデアと して良いんだけど、その男の言う、何故殺人の濡れ衣を着せられたのか、と言う過去の話を本人から一度聞いた だけでそのまま全員が信じてしまうことが凄く無理な気がする。嘘か本当か分からなくって、その後の展開の中 で徐々に真実がハッキリしていく・・・みたいな展開がこの設定だと常套だと思うな。それにその他の人質にな った人たちのそれぞれの事情もどんどん説明されるだけで変化もなく、最初に飛び込んで来た強盗が希望を取り 戻す「鈴」のモチーフもいかにも取って付けた様な印象を否めなかった。そもそも本筋である「今日時効を迎え る逃亡者の経緯」を掘り下げて行かないことが不自然なので、全体に嘘臭くて感情移入出来なかったのだと思う。 でも途中のおバカなギャグやそれぞれのキャラとかが楽しくて飽きずに見れたんだけどネ。布施さんは前回から このキャラが気に入っているのか、今回も赤鼻のお父さん的御人好しキャラ。良い意味で全体を締めて楽しい雰 囲気を醸し出してます。ここの劇団はいつも思うけど布施さんを中心にアットホームな雰囲気で楽しそうにやら れていて実に好感が持てます。小さな劇場で大げさな宣伝もせず、少ない観客を相手にヘタをすると言われなけ れば分からない程度の役回りで楽しげに演じている布施さんは本当に芝居が好きなんだなぁ、と感じ入ってしま う。まさかとは思うけどもう皮ジャン物はやらないでしょうね(笑)



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