「十字架」
たまの休みに楽しもう〜という映画ではないけれど、こうした作品も必要ですよね。そもそも演劇の起源には、世の中の問題を皆で考えようという側面があるのだし。
監督は製作に漕ぎつけるまで大変苦労されたそうで、そりゃヒットは望めないし出資しようって企業もそういないでしょうからねぇ。
そんな中で本作は茨城県の築西市がロケーションやエキストラ等、街を挙げての協力体制で製作されたというのも素晴らしい。
苛める側と苛められる立場、誰しも少なからず経験ありますよね。もしかしたら自分も当事者たちの誰かになったかもしれないと思うと、身につまされてしまいます。
とはいえ苛めシーンは辛い。原作がそうなのだろうけど、2011年に滋賀県大津市で起きた事件が思い出される。現実の惨さを逃げずにしっかり描写しなきゃテーマも伝わらない訳で、コレを演出していくには相当の気概が無ければ撮れないでしょうね。
監督や俳優さんたちに拍手です。主演の二人もそうだけど、特にご両親役の永瀬正敏さんと富田靖子さん……近年彼等の作品にハズレ無しというくらい良作ばかり。
映画館を出る時は観客も十字架を背負って出て来る様な感じでした。でも脚本の構成もよく考えられていて、胸に響くシーンが沢山ありました。