テレビや映画に活躍するメジャーな俳優でありながら小劇場での演劇公演をこよなく愛する布施 博さんの主催する「トーキョーロックンパラダイス」。今回はテレビ放映中の「優しい時間」の布施さん効果 もあってか、持ち小屋であるシアターブラッツは超満員の大喝采。ついにブレイクしたかの様な今までに ないギュウギュウ状態でした。今回の出し物はずっと以前に高田馬場アートボックスで公演し好評 を得た座付作家井上和子さんによる台本の再演だとか。それ未見の作だったので楽しみにして行 きました。物語の内容は、翌日に控えた解散式ですっかり足を洗おうと決意した昔堅気のヤクザ「高木組」の事務所が舞台。 組の解散を穏便に運ぼうと思っていた矢先に以前から対立していたヤクザの親分が何者かに殺され、その容疑が 高木組の若者にかけられ、親分を殺された組織が今にも戦争を仕掛けて来るのではないか、と言う危機に見舞わ れる。果たして彼等は無事解散出来るのか・・・と言う物語。オープニングからテンヤワンヤの騒動が絶え間なく 続き、誰彼となくハイテンションの飽きさせない展開が目まぐるしく進んで行く。途中相手の組織 の幹部にオカマを掘られた組員の話や、田舎の両親にまともな職についていると嘘をついている組員の母親が訪ねて 来るエピソード等笑わせる。そんな中で実は先代の親分の息子より実力がありながら跡目を親分の息子に譲った若頭 の男気や、二代目を襲名した息子の妻への想いもグッと懐に隠していた等の人情話が絡んで行く。座長の布施 さんはと言うと、それらヤクザたちの内情を知る老刑事の役で、最近の定番? になった叔父さんメイクに赤鼻で ベタなキャラを楽しげに演じています。超満員のお客の熱気も相まって楽しい舞台でした。ただちょっとオレと しては全編があまりに慌ただしく騒々しくに過ぎてしまい、折角の現組長と妻、それに若頭とが過去、組の跡目 と妻を巡る確執があったであろうに、全てを飲み込んで二代目を立てた若頭の哀愁とか、今は組長の妻になってる 姉さんへの想いとか、もう少し芝居を止めてじっくり情感に浸る場面もあったら良かったのでは、と思った。姉さ んを演じる井上和子さんが作者本人なのでそう言うシーンを作るのを遠慮したのかな? 折角の心に沁みる様な設定 があるのになぁと思った。カーテンコールの布施さんの告知によると、次回はトーキョーロックの原点に戻っ てミュージカルを企画しているのだとか。オレ的に勝手なこと言わしてもらうと、もっとリアルな新劇に近い様な ドラマを布施さんの抑えた芝居でじっくり観てみたいな。今作の様にキャラクターがみんな 色物的に演出されるのでなく、トーンを落としたリアルなドラマが観て見たいなぁ。