「キングコング」

 オレが悪かった! ピーター・ジャクソン監督の「ロード・オブ…」三部作ではボロクソに言ってしまったけれど、この映画は面白かったぞ!

 ん〜でもさァ、アンタ「33年版のオリジナルに忠実に作りました。76年版を見た時はガッカリした」って言うけれど。オレの観た限りこの作品はオリジナル版と言うより76年版に近いテイストだったぞ!

 33年版のオリジナルにはあんなオセンチで可哀相で涙する味付けは無かったんじゃないかい?
 オリジナルのコングはあくまで野性で狂暴であり、ただ本能でヒロインを我が物にしたいと言うキャラに徹していた。ヒロインと心を通わせるみたいなオセンチな描写は皆無だった筈。でも76年版世代のオレとしては、むしろコレこそがキングコング。

 ヒロインとつかの間、氷の張った湖で遊ぶ件とか、押し付けがましいオセンチな音楽はちょっと気になったけど、でも凄く泣けましたねぇ(笑)この場合いつもは空回りのCG技術がコング物語の哀しいテイストをグレードアップするのに効果を上げていた。

 ただ音楽だけは76年版ジョン・バリーの圧勝でしょう。今回のはオリジナル版の音楽を再現したりしてたみたいだけど、知らない者には全然印象に残らないでしょう。
 ジョン・バリーの音楽は大自然の神々しさやワイルドなコング、ヒロインとの悲恋とか、それぞれに奏でられるテーマがどれも美しくて素晴らしかった。

 同じ監督でも全く感情移入出来なかった「ロード・オブ…」と違ってコレは凄く感情を刺激されましたね。理屈じゃないんだよな、人間の中に潜在的に持ってる涙腺を振るわせると言うか。言葉にしてしまうと「哀れ」とか「可哀相」とかって陳腐な言い方しかないんだけど。エンパイアステートビルから哀しい目をしてズルズル〜っと落っこちてくトコは号泣モノでしたね。

 コレはもう中途半端にイヌ物語とかネコ物語じゃないから素直に良かったんじゃないかな。空想の産物でしょコングって、それでいてゴリラだからホントにいそうだし、怪物であると同時に動物としての親近感も持てて。だから素直に泣けたんでしょうかね。

 本作のコングはオリジナルの狂暴さを描くのと、76年版テイストのヒロインとのオセンチな描写を加味するのに失敗してるって意見もあるけれど、オレはそうは思わなかった。
 そりゃイロイロ突っ込みどころを上げれば切りが無いとは思うけど、でも最初の狂暴コングが出た時の驚きと、ヒロインとのやり取りで次第に心を通わせてく過程のサジ加減はよく考えられてたと思いますよ。だから後半あれだけ盛り上がれたのだし。

 だけどあの長ったらしい冒頭だけはなんとかして欲しかったですねぇ。物語と人物の前提? を説明するのになんでこんなに長くかかるんだ? と思った。船が島に着くまでに1時間以上もかかったぞ! 怪獣映画に3時間もかけてんじゃねえよ! と言いたくなった。
 しかしてこの第一部の1時間の睡魔に耐えれば、コングが登場してからはもうあれよあれよと言う展開!
 第二部であるこのドクロ島での恐竜、怪虫盛りだくさんの大サービスにはフラフラになる。

 そして第三部のニューヨークに来てからは一転してコングのなんと哀れな奮闘か! 大活劇で最後は泣かせて本当面白かったぁ!
 本作は古典に胸を借りた最新技術の勝利とでも言えるのでしょうか。



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