「金環蝕」

 こ〜れは面白かったですよ。言わば「政財界の仁義なき戦い」という感じ。

 原作は現実に起きたダム建設の利権と政界での権力闘争に取材した物らしいから、 実際こんなもんなんでしょうねぇ。いや〜リアルで恐いですよ。本当コレ観てると ヤクザも政治も変らんのだなぁと思えてしまう。

 し〜かし映画として観てる分にゃ仲代達也を初め宇野重吉! 三國連太郎、高橋悦史、 西村晃等々の立ちまくったキャラクターとスリリングな展開にもう〜面白くって全く 長さを感じさせない。

 仲代達也ってクロサワや小林正樹な印象が強かったけれど、本作のこ〜の軟体質で 得体の知れないインテリ政治家振りはどうですか!
 そして街金業者の俗物丸出しな宇野重吉のキョーレツなこと(笑)宇野さんて優しい おじいさんみたいな印象しか無かったのに、いや〜素晴らしいと言っておきます。
 この互いに「化け物だ」「あいつは馬鹿だ」と互いを評しあう仲代さんと宇野さんの 対決の構図が面白い。

 それとこの頃の時代性なのかもしれないけれど、出てくる女性の扱いの何と酷いこ とか! まったく添え物というか性の慰み者くらいの扱いしかされてなくって、誰も 人格を認められてない。

 この作品が作られた70年代って、日本の映画産業は本当にダメになると言われて ましたよねぇ。かのクロサワも行き詰って自殺未遂したり、日本で映画が作れずソ連 に行ったりしたんですよね。

 それでもこの山本薩夫という監督は、お金も賭けずにこんなに面白い作品を作って いたのだと思うと。今更ながら何か魂の様な物を感じてしまいます。



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