「この世界の片隅に」

 この夏大ヒットした「君の名は。」もそうだったけど、やっぱり思うのは「アニメは絵なんだなぁ」ということでした「かぐや姫の物語」を彷彿とさせる絵のタッチで、ほのぼのとした、日本人のDNAが刺激される昭和初期の暮らしが細やかに語られて行きます。

   そんな生活がビビットなインパクトを持って観る者に伝わってくるのは、時折り表記される年月日を告げるテロップが次第に「昭和20年8月」に近付いてくるから。舞台の広島に原爆が落ちた日が絶対的なサスペンスになって、人々の日常が強烈な意味を持って観客に迫ってくるという趣向。

 戦争の悲劇については今までに手を変え品を変え、いろんな形で私たちの前に現れて来たけれど、それでもやっぱり忘れるんですよねぇ。毎年8月になるとテレビで「火垂るの墓」をやったりすることで思い出されるという効果はある訳で。

 これからもこうした新しい趣向で戦争の惨さを伝える作品は出てきて欲しい、必要なことだと思いました。理屈じゃないですよ、全く可哀相で可哀相で見ていられません。

 エンドクレジットに列記される何とかファンド? でこの映画に出資した方々の名前を見ていると、こんなにも多くの人の同じ思いがこの作品を産み出しているんだなぁ、と思いました。

 本作は拍子抜けな程ほのぼのとしたタッチであるだけに壮絶なインパクトを残す。コレが創作におけるリアリティというものだと思いました。

 それでいて最初に出てきたバケモノ? や終盤に出て来る母親を失った孤児とヒロインとの幼い頃の記憶のリンク……等、フィクションならではの隠喩もあって、とても奥行きのある作品に仕上がっていました。



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