この作品はあまり一般に知られていないと思います。ポレポレ東中野と言うミニシアターで単館上映していたド
キュメンタリー映画。近所に住んでいる作家仲間 I 氏の地元北海道の新得町と言うところで撮影され、応援していると言
うので観に行って来ました。
舞台となるその町に共働学舎と言う施設があって、心や身体に障害のある方たちが集まって農業を営み
ながら共同生活を送っている。映画はそこに関わりながら暮らしている赤ちゃんを抱えた若い夫婦と、子育ても終わって
余生を送っている年配の二組の夫婦を主に取材している。
若い方の夫婦の奥さんは若い頃から自分探しの旅をして方々でいろんな経験をしながらそこへ辿り着き、酪農の会社に勤めている旦那さんと結婚して子供を産み、自分は共働学舎の一員
として農業のノウハウを人々に教えている。でもこの先ずっと共働学舎と関わって行くかどうかについて
悩んでいる。
もう一方の年配夫婦は至ってマイペースに農作物を育てながら、せせこましい都会生活からは
遊離した二人の生活を営んでいる。普通ドキュメンタリー映画と聞くと、何か強烈な人の生き様を
扱ったり、深刻な社会問題を取り上げると言うイメージがあるけれど、ここにはそう言った人々の葛藤や試練と言った
物は介在しない。むしろ人生の厳しさを描き出せそうな共働学舎そのものを素材とはせず、そこに関わりつつも少し逸れた
位置で生活している二組の夫婦の有り様を追っている。
聞けばこの女性監督さんも元々は川崎に住んでおられたのが、
当地へ移住して、そこで毎年行われているその名も「空想の森映画祭」でドキュメンタリー映画と言う物に初めて接してから
創作に目覚め、自分の好きな街(村?)と人々にカメラを向け始めたのだとか。それも一時中断した時期も含め7年間
もの間、90時間にも及ぶ素材を集めてから編集して2時間余りの作品に仕上げたと言うのだから、そのテイストは商業
映画や特別な問題意識を持ったドキュメンタリー作品とは一線を画する。
美しい自然と、そこに暮らす素朴な人々。特別
な事件が起こる訳でもなく、深い感慨を想起させる訳でもない、それこそ本当にただ淡々と情景を追って行く。朝10時
30分からの上映だし、こりゃ眠くなるかな〜と思ってたんだけど、コレが眠くならない。気持ち良いんですよ。こ〜
の夫婦、特に御年配の方の二人の佇まいは最高です(笑)ちょっと朴訥だけれどお酒飲むと陽気なご主人。ほ〜がらかでお茶目な奥さん! この二人の楽しさは小津安二郎にも出せません。
思うにこの監督さんは当初からどう言う映画にす
るかと言うさしたるコンセプトもなく、ただ闇雲に撮ってたんじゃないだろうか。それも90時間も、それでも視点に
統一感があるのはずっと監督の街や人に対する愛情に貫かれているからでしょう。あとカメラマンのアングルも良かったですね、きっと
予め完成した時こういう作品になるとは意識してなかったのだろうけど、実に的を得ていて、時にハッとする様な象徴的な
構図を撮っている。きっと監督さんと意志の疎通が上手く行ってたのではないかな。なんて勝手な憶測で
いろいろ言ってますけど。いや〜コレなかなか癒されます。北海道に旅して暖かい人々に出会った様な感じでした。
あと余談ですけど初日と言うことで雑誌ぴあの出口調査をやっていて、アンケートに協力下さいと言うのでペラペラ言いたいこと喋ってたんだけど、そしたら最後に誌面に載せるかもなので写真撮らせて下さいって! もし載るならも少し良いこと言ってあげれば良かったかなぁ〜等と思いつつカメラ目線で笑顔を作ってしまった。そんでコンビニで発売日にペラペラめくって見たら〜載ってやんの! 小さくオイラの写真が……ん〜でも記者さん上手く褒めてることだけ記載してくれてて良かったぁ(笑)嫌、まじ小旅行気分、癒され気分になりたい方とかお勧めですよ〜。