「キャロル」

 女優さんが主演女優賞にノミネートされたことでも評判の「レズモノ」と言えば近年フランス映画の「アデル」があるので、スキャンダラスな内容を期待していたら〜全く味わいの違う格調高い作品でした。

 何と言う撫で肩な始まり、ごくごく日常的なデパートの風景〜出会い〜と終始淡々とした描写が続く。全然ドラマチックではない、編集や映像処理や音楽等では表現しない、脚本があって、セット美術があって、衣装、照明、役者の演技があって〜最期にカメラが只それを「撮る」ことで観客に伝わる「感じ」が凄い。

 観客は美術館を回って「鑑賞している」様な映画だ。それはヴィスコンティやキューブリックを思い出させる雰囲気でした。

「アデル」がキョーレツな濡れ場を見せ場としていたのに対し、全く対照的なアプローチなんだけど、むしろこうした趣向の方が引き立つエロチシズムがある訳で。最初のキスシーンのゾクゾク感とか凄かった。

 そうと分かって心地よく作品世界に身を任せていたら〜いや〜短い映画ですよ! 褒め言葉なんですけどね、まだ半分しか見てないのに終わっちゃうんだから、愕然ですよ。

 でも時計を見れば確かに2時間が過ぎている。よくある冒頭から時間が遡り、またラストで冒頭のシーンに戻るという趣向? にしてはずい分早いな……と思っていたら〜暗転してクレジットが上がってくんだもの、唖然ですよ。ええ〜〜〜せっかくいい気持ちで観てんのに終わるんかい!

 良く言えば全く長さを感じさせないってことですよね。ベルイマンの映画みたくもう2時間あっても全く長くない、ってか見せてくれよ! と言いたくなる。

 起承転結で言えばまだ「承」の途中じゃないですか? ま〜ったく喰い足りない! メインディッシュが出る前に取り上げられてしまった感じだ。

 アカデミー賞に沢山ノミネートされたのに無冠に終わってしまったのはその辺りのことじゃないかな。一発ガツンとクライマックスがあれば……なんて思いました。

 んでもまぁ、確かにこういう趣向もアリですあね、昨今「ソーシャル・ネットワーク」とかもそんな感じやったし、スターウォーズみたく続きが見れるという約束があればまたアレだけど。


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