「凶悪」

 若松孝二監督の助監督だった白石和彌監督による、衝撃の問題作ってことで行ってきました。

 若松孝二といえば実録モノや衝撃的な暴力描写ですけれど、それはもう十二分に踏襲されている感じでした。

 でもオレ家族にも見放されたお爺さんが無理やり強い酒を飲まされて「早く死ねよ」とか言われてるの見てて、数千万円の借金を抱えてろくに仕事も出来ずに酒ばかり飲んでたんじゃ「こりゃ殺されてもしゃーないだろう」なんて思ってる自分に気付かされる。

 でもリリー・フランキーたちがケラケラ笑いながらスタンガンで老人をなぶるところにゃ醜悪を感じている自分にホッとしたり。

 最期まで観終わってみると、見ながら感じてたことは端っから監督の作意が的確に表現されている故だったのか。と思うと凄く良く出来た映画なのかもしれません。

 若松流の暴力描写だけでなく、その背景から浮かび上がってくるテーマや、映画だけがもつ表現のなんたるかも見事に受け継がれてるのかもしれません。

 キャストのピエール瀧さんはふと安岡力也さんが過りますね。凄むと恐いんだけど、ビートたけしが映画でどんな残酷なことをしても何処か憎めない感じに似ていますかね。

 リリー・フランキーさんもパッと見は全く悪い人に見えないところが良いですね。それでいてこんな感じの不動産ブローカーってよくいそうでリアルだ。

 ピエールさんの愛人役のお姉ちゃんのエロいこと! も若松監督の直伝なんですかね。

 こんな作品にこんな言い方が出来るのも映画だからだけど、スッゴイ面白かった!


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