「恐怖の報酬(1952)」
コレはかのウィリアム・フリードキンのリメイク版を日曜洋画劇場でやった時、
淀川さんが耳に手をあてて画面に問いかけるみたくして「アナタ、コレどうでした? オリ
ジナルのクルーゾー版と比べてどうでした? なに?(小さい声で)負けた?」って言った
のが印象に残っている。そのオリジナル版の方です。
リメイク版は、トラックがニトログリセリンを乗せて走る描写を嵐にしたり、濁流の上を
今にも落ちそうな吊り橋をトラックで渡らせたりと、「フレンチコネクション」や
「エクソシスト」のフリードキン監督によるビビットな描写は凄かったけれど、この作品のサ
スペンスのテイストの置き所はやはりフリードキンテイストとは違ってたのかもしれません。
オリジナルはのどかな田舎町で、良い景色……だけどトラックにゃニトロを積んでます……
みたいな。よく解んないですけど(笑)。
フリードキン版みたく、見るからに主人公たちの置かれた状況がオドロオドロしく、ジャン
グルの道や登場人物たちの胡散臭さを強調するよりも、単純に金が欲しい、静かな佇まいか
ら醸し出す人間ドラマみたいな雰囲気で、それが時として暴力衝動に変化したり、また唐突
に爆発描写があったりする方が、ショック効果が活きたのかもしれませんね。
特に2台のトラックの片方が爆発してしまう件のカット割りは鮮烈でしたね。巻きタバコ
の紙を巻こうとしていたらサッと葉っぱが飛んでしまう。アレッと思って外を見たら煙が高く
登っていて、続いてドカーンと爆発音ですよ。
あと最初の「ニトログリセリンが如何に怖い爆発物なのか」を示すシーンも、フリードキン
版は手に付いたニトロが一滴垂れただけでボンッ! ってなったけど、これが大規模になったら
……って恐怖感もオリジナル版の方がビビットだった気がする。
思うにフリードキン版は舞台にした亜熱帯ジャングルのビジュアルやディテールに凝り過ぎて
、オリジナルの様なシンプルだけどストレートな恐怖感を薄める結果になってしまったのかな。
あと当時流行ったタンジェリン・ドリームの電子楽器を駆使したカッコ良い音楽も、ムードを
高めてはいたけど、恐怖とは違ったのかな……って、すっかりオリジナルとリメイクの比較の
話になっちゃいましたけど。
あと、本作は白黒作品なんだけど、一時期流行った「白黒映画に色を付けてカラーにする」
のが流行った時にやられてて、そ〜れが実によく出来てるんですよ。オレ初めて本作を観たの
がそれだったので、長い間てっきり「恐怖の報酬はオリジナル版もカラー作品」だとばかり
思っていました。