「魔法使いとstry Sheep」

劇団ヒラガナ第9回公演(2006年3月17日三軒茶屋 studio SPARK1)

あの世とこの世の間に「その世」と言うのがあって、そこではこれからこの世に生まれて来る魂と これからあの世へ行く魂とが二人一組のペアになって他のペアたちと数々の障害を乗り越えてレースをし、 優勝したペアの二人だけがそれぞれあの世とこの世へ行くことが出来る。あの世へ行こうとしている魂に はそれぞれひとつずつ違った能力の魔法を使うことが出来、それぞれが自分の魔法を駆使して他のペアと 戦いながらゴールを目指して行く・・・と言う。ファミコンのゲームみたいな世界観の中で展開して行く ストーリー。主人公はこれから「この世」へ生まれ出る為にレースに参加する狸? か何かの霊魂で、前世 で殺し屋として数々の殺人を犯し、やがて恨みを買って殺され「あの世」へ行こうとしている孤独な男 の魂とペアーを組み、他のペアたちと戦いながら旅をして行く。このレースの中で他のペアのいろいろな 業を背負って死んだ魂たちとのやり取りがあり、それぞれが何故死亡してあの世へ行くのか、こ の世に生まれて何をしたいのか・・と言う希望や事情が絡みあい、中には前世でお互い関わりを持って いた魂もいて ドラマが展開する。まぁ複雑な世界観と言い、それぞれの設定など良く作り込まれているのだけれど、いか んせんそのどれもが殺し屋だとか、殺人鬼だとか、余りに普通の日常からかけ離れているので、我々観客から すると現実味がなく、一般人との接点が無いのでそれ程親身になって見入ることが出来ない。 ただでさえ空想な設定なのだから、せめてそこで翻弄される魂は観客と等身大の悩みや希望を抱えた 共感出来る存在でないと感情移入出来ないよなぁ・・。それと現実離れしたファンタジー の世界だから、コレはセットや衣装等、それこそキャラメルボックスの様に絢爛たる美術が無いと白けてし まう。殆ど素舞台に近いセットだし、音響効果も照明ももっとやり様があったのではないかな・・と 思ってしまった。ファンタジーって、どれだけその世界に観客を引き込めるかが勝負だからね。ちょっと オレは夢見れなかったかな・・・もしかして歳のせいかな(苦笑)。



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