「真夜中のカーボーイ」
黒澤明がこの映画のダスティン・ホフマンの芝居をすごく印象的に語っていました。
確かにスゴイですよね、アクターズ・スタジオの面目躍如って感じで、見てると「一
体何処までが演技なんだか……」と思ってしまう。
都会を夢見る青年ジョン・ボイトが意気揚々と都会に出て来てダスティン・ホフマン
と出会い、挫折して行くと言う暗〜い話なんだけど。
オープニングの夢見るボイトのなんと言う高揚感! そして都会のゴミタメに巣食っ
ているダスティン・ホフマンのインパクト溢れる芝居、そしてあの絶望感溢れる、虚し
さの極限状態の情けないラスト!
日本でも田舎から都会へ出て来た若者が挫折して行く図式って今じゃ珍しくも無いけ
れど、この映画が公開された当時は鮮烈だったでしょうねぇ。
夢と希望を一杯持って田舎を旅立って来たジョン・ボイトが、映画館で隣りにいたオ
ヤジにトイレでチンポしゃぶられて叫ぶシーンは爆笑しちゃいますけど(笑)
コレを初めて観た時は遠い他所の国のお話で、アメリカって汚ぇなぁ……なんて思っ
てたのが、今じゃ日本でも変わりませんからねぇ……。
今更ながらアメリカ化してしまっている日本を認識して驚いてしまいます。
けれども映画ファンの間でこの映画を好きな人がなんと多いことか。これでもかと悲
惨を見せられて好きとは何なんだろうと思うけど。
映画にはそう言う側面もアリなんですよね、悲惨ならば悲惨な程気持ち良いみたいな。
でもそれはあくまで虚構の世界として観ての話なんだろうけど、今じゃ日本もこの映
画みたいな笑えない青春が沢山ありますからねぇ。
コレもひとつの人生のワビサビ、とでも言えるのかもしれないけれど、人は時として
辛い(カライ=つらいとも読みます)物が好きなんですよね。正直オレも大大大好きな
んですが(笑)。